こんにちは、ポプラ社教育コンテンツ営業部です。私たちは、毎日のように書店、学校、図書館にお邪魔しています。
その時の新刊や、売行き良好書を案内したり、本の活用に関する具体例をお伝えしたりします。時には使い方をレクチャーさせていただくことも。ポプラ社の本についてはなんでもお答えできるようにするのが私たちのお仕事です。全国の図書館とポプラ社の間を、陰ながら繋いでいます。
そんな中で、新刊や目立つ本ではないのだけど、実はこっそりとおすすめしている本を、それぞれの営業担当者は持っています。もっと、知ってほしい。そんな本があります。それを少し、お見せしようと思います。
- 営業U
- ポプラ社で学校・図書館への営業をしています。九州沖縄が担当地区です。九州沖縄の図書館の方がお読みくださっていたら、お会いしたことがあるかもしれませんね。
今回ご紹介するのは、
『うちの子は字が書けない 発達性読み書き障害の息子がいます』(千葉リョウコ/著)です。
ひかれたきっかけ
WEB連載のときから、とてもショックを受けた本です。
子どものころ、周りにいませんでしたか? とてもとても字がきたない子。
私の身の回りにもいたのですが、もしかしたら、その子たちも、この本のフユくんと同じだったのかもしれません。もしかしたら、気が付いていないだけで、あの子も苦しんでいたのかもしれない。
また、自分も親になった今、このようなことで苦しんでいる子どもと親がいることにショックを受けました。自分の子どもにも同じ苦しみが待っている可能性があるかもしれないのに、そのこと自体を知らなかったことがショックだったんです。
▲『うちの子は字が書けない』10ページ
発達性ディスレクシア。発達性読み書き障害といいます。「発達障害の一種で、知能や聞いて理解する力には問題がないとしても、読み書きの能力だけに特に困難を示す症状(本文より)」のことです。
なんと、日本の小学校1年生から6年生までを対象とした調査で、8%弱がディスレクシアという結果が出ています。実に、40人クラスに3人はいるという計算です。
周りからわかることは、字がきたないこと。それだけに、親も、先生も、とても気づきにくい障害なのだそうです。
作中のフユくんは、自分が苦しいことに気が付きません。なぜ、人と同じようにできないのか。苦しいのですが、その苦しさがどこから来ているかがわからないのです。
▲『うちの子は字が書けない』148ページ
著者の千葉リョウコさんは、このフユくんのお母さんです。フユくんは他のことはできるのに、字を書くことが特別苦手。フユくんのお母さんはこれはなぜだろうという違和感をずっと抱いていました。そんな折、講演会に参加したことがきっかけで、ディスレクシアという障害があることを知ります。怖いぐらいに、フユくんにあてはまったそうです。その後フユくんは、正式に発達性ディスレクシアと診断されました。それまで、だれもフユくんがディスレクシアだということに気づけなかったのです。統計では、40人に3人はいるのに……。
フユくんと家族は、ディスレクシアを乗り越えようと決意し、文字を書くトレーニングをはじめます。
学校・図書館にお薦めするわけ
発達性ディスレクシア自体、知らない人が多いと思います。この本が学校や図書館にあることで、自分が、お友達が、生徒が、この障害なのかもしれないと気付き、次に進める人がいるかもしれません。だからこそ、図書館にアーカイブされ、長く読まれてほしいと思います。この本を中心にした展示などいかがでしょうか?
また、2016年4月から施行された障害者差別解消法によって、国公立の学校や役所、図書館などの施設において障害を理由とする差別が禁止されるとともに、「合理的配慮」の提供が義務となりました。
この「合理的な配慮」をめぐる葛藤も、この本には描かれています。
▲『うちの子は字が書けない』128ページ
フユくんは、法律を活用することでサポートを受け、学校の中で自分だけが特別扱いをされることは、「ズル」をするということじゃないかと思っていたのです。小さい頃から、劣等感やつらい気持ちを感じていて、それをことさら助けられることもつらい。そのつらさは周囲が想像するよりも深いものです。
この本はコミックエッセイです。ディスレクシアというテーマは、特にコミックに向いていると感じます。同じ内容が文章で書かれているよりも、ディスレクシアの子どもたちに届きやすいのではないでしょうか。
第二弾となる『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら 発達性読み書き障害の子の自立を考える』も、2020年2月20日に発売予定です!
子どもの自立を考える、実践サポート編となります。
図書館に一冊、いかがですか?