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ポプラズッコケ文学新人賞

第4回

受賞作品

第4回ポプラズッコケ文学新人賞

 「第4回ポプラズッコケ文学新人賞」にご応募くださった皆さま、どうもありがとうございました。今回は、総数209編のご応募をいただきました。

 10人の選考委員で全作品を読ませていただき、16作品が2次選考に進みました。議論をたたかわせ、その中から3作品が最終選考に進み、審査委員長の那須正幹先生と、選考委員ほぼ全員から評価の高かった、蒼沼洋人さんの「さくらいろの季節」が大賞に選ばれました。

 小学6年生の少女めぐみが、親友の優希が転校してしまったあと、次第に変わってゆく周囲の状況や自身の内面を、エピソードの中で丁寧に綴った短編連作です。読み手を引き込み共感させる文章の巧さと、少女の心情を繊細にとらえる感性に、評価が集まりました。活躍を期待して、ポプラ社よりデビューしていただきたいと思います。

 ほかの2作品『チームライブラの事件簿 家出する青いねこ』(ナユメオオキさん)、『ハッチ&ロック!』(林けんじろうさん)にもそれぞれ長所があり、熱い選考会となりました。詳細は講評をご覧ください。

 全体についてですが、今回は内容面での目立った傾向は感じられず、事件や展開でひっぱるもの、キャラクター重視のもの、感性で読ませるものなど、のびのびと自分の世界を表現したバラエティに富んだ作品が集まりました。ただ、「だれが読むのか」ということをあまり念頭に置いていない作品が増えた印象が多少あります。小学生の読者が楽しめるかどうか(もちろん単純に「笑える」という意味だけではありません)、今一度お考えいただきたいところです。

 また、二次選考では、これまで継続してご応募いただいている方がたの作品が話題となりました。ある程度まとまっているものの、決定力に欠け、先に進めないという結果が続いています。応募用に作品をまとめることにとらわれすぎず、これを描きたいという熱意や、自らの創作へのモチベーションのようなものにもう一度立ち返ることが、二次選考を突破する鍵になるかもしれないと思います。

 一方で、略歴を拝見すると、これまでコツコツ作品を書いて公募にチャレンジし、評価を積み重ねてきている方が、最終候補に残られています。やはり、完結する物語を繰り返し書き、批評を受けて客観的に振り返ることが、実力の向上につながるのではないかとも思います。

 地道な努力は確実に力になりますし、その積み重ねがアイディアのストックともなり、デビューしてからの執筆の大きな支えになることは間違いありません。さっそく第5回の募集要項を発表しております。編集部をうならせる力作のご応募を、心よりお待ちしております。

大賞 副賞100万円

受賞作(大賞)
『さくらいろの季節』蒼沼洋人
受賞のことば大賞 さくらいろの季節さん

身に余る大きな賞を頂くことになりました。誠にありがとうございます。
選考委員の那須先生、編集部の皆様はじめ、賞の運営に携わってこられたすべての方々、支えてくれた家族と友人に、心から感謝いたします。

生きているとしんどいことや大変なことがたくさんあります。
おそらく子どもも、大人も、私も、皆様もいっしょだと思います。
動くことさえできず、ただ、天を仰ぐことしかできない日があります。不運をうらみ、自分の力不足を嘆き、すべてを投げ出したくなる夜があります。
それでも完全にうちのめされることなく、涙をこらえて立ち向かい、震える足で立ち上がろうとする人の姿は本当に美しく、変わろうとする人間の一瞬の輝きを、私は作品の中で表現していきたいです。そして、願わくば私自身も、そんな人間になりたいと思います。

まだ書かれてはいないこと、書くことはできないけれど書いてみたいこと、書くべきではないけれど書かなくてはいけないこと。
未熟な新人で、今後のプランも戦略もありませんが、これからもゴソゴソと活発に動き回りながら、楽しいことを全力で探して、子どもたちが笑顔になれるような作品を、しぶとく書いていきたいです。
このたびは本当にありがとうございました。

  • 蒼沼 洋人

選評

大賞『さくらいろの季節』蒼沼洋人さん
最終選考に残った三作は、それぞれ個性的だったが、選考に参加した編集者たちの大方が推した『さくらいろの季節』を大賞に決定した。私自身も諸作品を読了したとき、これに決めていた。登場人物が生きていること、ストーリーに作り物めいたものを感じさせないことが第一の理由だろう。作品は、いわゆる学級ものと呼ばれるもので、主人公「めぐみ」のクラスでは、かつての友人である理奈がボスとして君臨し、担任教師ともいざこざが絶えない。教師に好意を持つめぐみは、理奈グループに抵抗し、いじめのターゲットにされる。クラスの確執を通して、自我に目覚め成長していく主人公の心の揺らめきを丁寧に追っているところに好感を持った。ズッコケ文学賞といえば、ユーモアや冒険活劇のみが対象と誤解されるかもしれないが、現在の子どもをきちんと描いた作品なら大歓迎である。
  • (選考委員長 那須正幹)

最終候補のほかの2作品について、編集部の講評を掲載させていただきます。
『チーム・ライブラの事件簿 家出する青いねこ』ナユメオオキさん
小学5年生コテツのところに、クラスメイトのカツマが、家出したのでかくまってほしいとやってくる。コテツはいじめられっ子のセイシロウとともに、学校の一大勢力チーム・レオに対抗しながら、カツマの問題を解決しようとする。やがてそれは街で起こった宝石の盗難事件と結びついて──。はずれ者同士が組んで、大きな勢力に対抗する設定や、主人公を助けに神出鬼没に現れる積極的な女の子イツホのキャラクターがユニークで好感が持てたが、高額の宝石が盗まれる事件を小学生だけで解決したり、家出した子を誰にも見つからずに家でかくまい続けることができたりなど、それなりのリアリティが必要な部分を、面白くするために都合よく書いてしまっている部分が全体の楽しさを損ねてしまった。また、饒舌な一人称の独特の文体が、ユーモラスか読みにくいかは、選考委員の中でも感想が分かれた。個性的ゆえに読者を選ぶ文体かもしれない。キャラクターの自主性が感じられ、明るく楽しいノリが強い持ち味だと思うので、続けて書いていっていただきたい。
『ハッチ&ロック!』林けんじろうさん
大阪の小学6年生むつきと、むつきの父の再婚相手の子で、血のつながらない同い年の弟瑛斗(えいと)。むつきは勉強が嫌いで内弁慶、瑛斗は体が弱くて外面がよい。性格が違って仲の悪い兄弟が賭けをして、岡山で開催されるスポーツカーのイベントに二人だけで出かけていく。同じく岡山に向かう、広島の少女みずもと父京一郎親子のストーリーとクロスさせて物語を展開していく構成にはアイディアがあるが、そこにとらわれ作りこみすぎたところがマイナス効果を生んでしまった。全体に冗長な点と、構成ありきで技巧によりがちな点が指摘された。兄弟のやりとりの描写にはリアリティーがあり、魅力を感じるので、みずもサイドの話を出さずに兄弟の話でもっと短くまとめたほうがよかったように思う。また、この兄弟を描くのになぜ「ハチロク」のクルマなのかという理由付けと、クルマに興味のない人にも面白く感じられるような書き方ができると、よりよくなるのではないか。筆力のある方だと思われるので、1作1作を大事にして完成度を上げていっていただきたい。

選考経過

応募総数209編。

10名の編集者で分担し、1次選考。判断に迷う作品については2名以上の編集者が読んでいます。
その結果、以下の16編が2次選考に進みました。

タイトル名著者名最終選考に進んだ作品
チムは秘密の狼男柳月縞
見習い狐三吉泉田もと
まいこ、おずおず交渉人真風月花
旧図書館のマジカル・フレンズ神田祐希
女子なんか嫌いだ!嘉瀬陽介
キビ畑の小人伊藤由美
三つの予言織原崇
ふたりのさくら 赤い部屋の人形たち有池らんど
亜紗と河童の弟本間千絵
さくらいろの季節蒼沼洋人
あけの花竜太
チーム・ライブラの事件簿 家出する青いねこナユメオオキ
『三時のおやつ』は漫才だ!藤田曜
ハッチ&ロック!林けんじろう
宝受山の秘密尾崎潤
ポニイテイル藍澤誠

※応募受付順、敬称略

2次選考では、10名の編集者が16編の作品すべてを読んだ上で議論を戦わせ、3編を最終選考に進めることとなりました。
最終選考は、選考委員長の那須正幹先生及び12名の編集者で行いました。

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