「第5回ポプラズッコケ文学新人賞」にご応募いただいたみなさま、どうもありがとうございました。今回も力作が集まり、全部で195編のご応募をいただきました。
12人の選考委員ですべての作品を読ませていただき、16作品が2次選考にすすみました。選考委員長の那須正幹先生、弊社社長、13人の編集者で行った最終選考には、過去最多となる5編が駒をすすめ、議論をたたかわせた結果、ささきかつおさんの「モツ焼きウォーズ 立花屋の逆襲」を大賞と決定いたしました。
物語の舞台となるのは、再開発のため商店街からの立ち退きをせまられている、「モツ焼き立花屋」。その四代目である小学6年生のタケルは、ある日、親戚のババ様から驚きの真実を告げられる。それは、立花家は忍びの血を継ぐ一族であり、姉や母は、代々伝わる不思議な妖力を持つ石の力で妖術が使えるというものだった! 立ち退かせのプロ・横木の作戦を前に、家族は一致団結して、お店を守ることができるのか―!?
読み手の心をつかむスピーディーでわくわくする展開、笑いの多いどたばたストーリーの中に、家族の絆、地元の常連さんとの温かな関係性を描き入れたこの物語は、まさにエンタテインメントの王道であり、ズッコケ賞にふさわしい作品として大賞にえらばれました。今後の活躍を期待して、ポプラ社よりデビューしていただきたいと思います。
ほか最終に残った4作品につきましては、選評のほうで述べさせていただきますが、それぞれに長所、そして課題もありました。とくに「江戸っ子しげぞう」は、ユニークなキャラクターと、斬新な切り口で注目を集めました。現代を舞台に、江戸っ子のことばと気質を受け継ぐ主人公・しげぞうの魅力は、今回の選考の中でもひときわ目立つものでした。惜しくも大賞とはなりませんでしたが、次の作品に期待したいと思います。
全体の傾向として、今回SFやファンタジーなど読み手の日常からは離れた設定に挑戦した作品がいくつか見られるなかで、多くの作品が世界観を細部まで描ききれていない、またはどこかで読んだことのあるようなステレオタイプに留まってしまっていたように思います。2次選考では、新しいタイプの作品として、ライトノベルに近いタッチでゲームの世界を軸に描いた「ブレーン&ファイターズ」が話題となりました。文体など未完成な部分も多く、最終候補とはなりませんでしたが、新鮮さが印象に残りました。設定にしろ登場人物にしろ、「読み手=こどもたちにわかりやすいオリジナリティ」が、必要とされるのだと思います。何を描きたいのか、はもちろん大切なことですが、どうしたら伝えられるのか、ということを意識してみなさまには創作活動を続けていっていただきたいと思います。
さっそく第6回の応募要項を発表しております。編集部、そしてその先にいる子どもたちをうならせるような、魅力的な作品をぜひお待ちしております。
大賞 副賞100万円
栄えある賞をいただき、喜びの気持ちでいっぱいです。
那須先生、ポプラ社の皆様、自分を支えてくれた方々に、この場を借りてお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
自分は、空想と読書が大好きな少年でした。
町の図書館、学校の図書室から本を借りて読み、物語の世界でドキドキ、ワクワクの冒険をしたものです。
いつからか自分も物語を作り出したいと思い、書き始め、気がついたら今に至っています。
これまでに出会った本たちが、自分という人間を作り上げてくれました。
ならば自分が書いた本で、人を、世の中を……というおこがましい気持ちはありません。
けれど、殺伐とした世の中で、読書って、物語ってイイな……そう思ってもらえる本を書いていきたいです。
スマートフォンやテレビゲームなど、世の中には楽しいものが沢山あります。
けれど、本だけでしか表現、体得できない楽しさも、きっとあると信じています。
本をめぐる環境は厳しくなる一方ですが、それでも、まだまだ力はあると信じています。
駆け出しの、ピヨピヨが偉そうなことばかり言ってスミマセン。
でも、本の力、物語の力で読む人を笑顔にしたい、元気にしたい、そう強く思っています。
これからがスタートです。今後ともよろしくお願いいたします。
応募総数195編。
12名の編集者で分担し、1次選考。判断に迷う作品については2名以上の編集者が読んでいます。
その結果、以下の16編が2次選考に進みました。
タイトル名 | 著者名 | 最終選考に進んだ作品 |
---|---|---|
ドリーム・メーカー | 井神まり | |
サマータイム☆トレジャー | 藍沢羽衣 | |
うそつきハーメルン | 藍沢羽衣 | |
ひいひいおじいちゃんのノート | 守分結 | |
ブレーン&ファイターズ | 碓氷秋人 | |
少年国際警察 シュン | 根岸やすお | |
ぼくのナニーロボット | 萬天ユキ | ● |
タツノオトシゴ伝説―家系図に隠された暗号の謎をとけ | 松上クララ | |
コウタとマツタロウ | ひろつち | |
エトワール | 神谷栞 | ● |
オープン・ロード | 江角岳志 | |
江戸っ子しげぞう | 本田久作 | ● |
空色あっぷれら | 林けんじろう | ● |
モツ焼きウォーズ 立花屋の逆襲 | ささきかつお | ● |
とうちゃんは裏方スタア | 金子京子 | |
妖怪人間二郎 | Jet Romancer |
※応募受付順、敬称略
2次選考では、12名の編集者が16編の作品すべてを読んだ上で議論を戦わせ、5編を最終選考に進めることとなりました。
最終選考は、選考委員長の那須正幹先生及び弊社社長、13名の編集者で行いました。