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ポプラズッコケ文学新人賞

第6回

受賞作品

第6回ポプラズッコケ文学新人賞

 「第6回ポプラズッコケ文学新人賞」にご応募くださりました皆さま、どうもありがとうございました。今回は、総数203編のご応募をいただきました。

 12人の選考委員で全作品を読ませていただき、13作品が2次選考に進みました。議論を重ね、その中から5作品が最終選考に進み、審査委員長の那須正幹先生と選考委員8名から評価の高かった、和泉智さんの「うたえ! かんたーた」が大賞に選ばれました。

 物語の主人公・如月かのんは、地元の小さな合唱団「かんたーた」に所属する小学6年生。今の心配事は、憧れのテノール歌手だった叔父の慎治が問題を起こして舞台を降ろされ、うちに居候していること。そんな中、「かんたーた」で歌を教えてくれている先生が突然倒れてしまう。夏休みの後半に控えている合唱コンクールには指揮者がいないと出場できないのに……。そこでかのんは、叔父の慎治を巻き込むことを考えついて――。

 合唱団に所属する子どもたちがコンクールに出場するべく自分たちで考え行動し、問題を解決していく姿が軽快なテンポで描かれます。終始明るいトーンで、非常にのびやかな作品でした。子どもたちだけでなく、周囲の大人たちにもスポットをあて、人間のいいところも悪いところも受け入れて描こうとしている著者の姿勢に選考委員から好感が寄せられました。今後の活躍を期待して、ポプラ社よりデビューしていただきたいと思います。

 ほか最終選考に残った4作品につきましては、それぞれに長所がありましたが課題も多く、授賞には至りませんでした。詳しくは選評のほうで述べさせて頂きます。ぜひ次回での飛躍を期待しております。

 全体の傾向として、今回は「現実と異世界を行き来する」作品が大変多かったように思います。ごく普通の日常から、魔法や妖怪がでてくる別世界へ……といったストーリー。縦横無尽に想像を広げ、読者を思いもしなかった世界へつれていってくれる物語はもちろん魅力的ですが、設定の説明に重きを置きすぎて、主人公の造形やテーマの掘り下げ方がおざなりになってしまうのは残念に思いました。ファンタジー要素がなくても、あるいはないほうが、子どもたちの心の機微や、人とのかかわりあいの中で成長していく姿は書けたのではないか、と思われる作品が多くありました。

 おもしろく読ませるためにスケールの大きな世界を設定するのもよいのですが、読み手である子どもたちが共感できるように、テーマを見失わないようにしてください。その上で、大いに冒険し空想し、オリジナリティあふれる物語を紡いでいただきたいと思います。第7回の応募も近日発表の予定です。編集部をうならせ、子どもたちを夢中にさせる力作のご応募を、心よりお待ちしております。

大賞 副賞100万円

受賞作(大賞)
『うたえ! かんたーた』和泉智
受賞のことば大賞 和泉智さん

栄えある賞をいただくことになり、驚きと喜びでいっぱいです。
那須正幹先生、編集部の皆様、未熟なこの作品に可能性を見出してくださり、ありがとうございました。また作品作りを支えてくれた周囲の人々にも、この場を借りて感謝の意を申し上げます。

「おかあさん、面白いから続きをかいて」 このお話は、小学生の娘のひと言に支えられて完成しました。いつもの調子で書き散らかしたものの後が続かなくなってもう破棄するつもりで、彼女に見せたときのひと言です。ひとりでも面白いと言ってくれる子どもがいる、たとえそれが身内でも。イメージが一気に膨らみました。

親子で、小さな合唱団に籍を置いています。
お話のなかのかんたーたのように、みんな仲良く、楽しく、真剣に歌っています。その光景から拾ったたくさんのキラキラしたかけらで、このお話はできました。

お話を作ることは小さいころから大好きでした。
けれどそのなかに日々の経験を織り込むことができるようになったのは、ごく最近のことです。
私たちはみんな、現実を生きています。現実でないお話を楽しむのは、つらい現実から目を背けるためでしょうか?
そういう場合もあります。
けれど、現実の中のキラキラを見つけたり、拾い上げたりできるのも、お話の力なのではないかなと感じるのです。
そんなキラキラを伝えられる作品を、これから書いていけたらと思います。

  • 和泉智

選評

大賞『うたえ! かんたーた』和泉智さん
今回最終選考に残った五点は、例年に比べてやや低調な感があり、いずれも積極的に推したくなるような魅力に乏しかった。
もちろんどの作品も読者に興味を持たせようと、奇抜なストーリー展開や、面白い人物を登場させているのだが、作品世界の構築がお粗末だったり、登場人物の行動に必然性がなかったりという瑕疵が目立った。
そんな中で唯一、ストーリー展開も無理がなく、読後感もさわやかだったのが「うたえ! かんたーた」だった。
小学六年生の少女如月かのんは、「かんたーた」という小さな合唱団のメンバーで、夏のコンクール目指してレッスンを重ねている折も折、指導者が病気で入院、コンクール出場が危なくなる。といったところから物語が始まり、テノール歌手の叔父の協力を得て、なんとかコンクール出場を果たすことができる。
運動競技や各種のコンクール出場を描いた作品は珍しくないし、結末も優勝か敗退の二つしかないので、結末に至るプロセスや登場人物の描き方が、作者の腕の振るいどころだろう。あるいは競技種目の魅力を読者に共有させることが重要になってくる。合唱部仲間の奏太や七瀬が良い味を出しているし、レッスンの指導を引き受けてくれる叔父の慎治が興味深く描かれているところを評価し、今回の賞に推薦した。最終選考に参加したポプラ社編集部諸氏の評価も本作が最高点だったので、協議の結果この作品に決定した。
ズッコケ文学賞は、子どもたちの自主性と行動力を描いた作品に授与されるべきだと考えているので、その点でもふさわしい作品だったと思っている。
  • (選考委員長 那須正幹)

今回惜しくも大賞を逃した最終候補のほか4作品について、編集部の講評を掲載させていただきます。
『革命のアイリ!』山本李奈さん
ある日、なにもかもいやになって学校をサボってしまった13歳のアイリ。現在からも未来からも逃げたくて空を見上げていると、突然いなずまが走り……。気づけば別世界へ飛ばされていた。そこは個人の自由を禁じたヘイス国。鎖国中で、国内外への出入りが禁止されている。そこで出会った「革命」を目論む16歳の青年ロジェと共に、アイリは旅にでることになって――。ゲーム的なテンポの速い展開、ノリのいい文章と漫才のようにユーモラスな会話の応酬。子どもたちが親しみをもって楽しく読めるように描けるセンスを感じた。ただ肝心の主人公アイリが主体性に乏しく存在感に欠けており、ほかの多くの登場人物もそれぞれを描ききれていない印象を受けた。この世界が主人公のつくった虚構なのか、独立した異世界なのかははっきりさせて書くべき。「革命」だというのに人民たちの声が聞こえず、300枚以内におさめるには話を広げすぎた感が残る。
『僕たちの挑戦 限界集落』前田昌利さん
有名小学校からドロップアウトした陽介は、東京を離れ「限界集落」里美村で林業を営む祖父と暮らしている。村でできた親友の健太や密かに恋心を寄せる優子先生らに囲まれ見違えるように逞しくなった陽介は、自分を受け入れてくれた里美村のためにとシャッター街となった商店街を復活させる計画を立てる。けれど母親との約束で1年後に東京に戻らなければならないことを、誰にも打ち明けられておらず――。社会問題を題材にした意欲作で、主人公の熱い気持ちに思わずぐっとくる場面もあった。ただ、主人公が東京の小学校でつまずいた問題がはじめからクリアされており、話が途中から始まったようにも読めた。限界集落の現状や問題についての把握がまだ甘く、題材を堀下げきれていない感があった。また描写が全部説明調になってしまっていること、都会が悪といったように価値観がやや固定化されていることも気になった。
『空に舞う竜の鳴き声』守分結さん
両親の離婚後、中学二年の翔太は何に対しても無気力な自分に嫌気がさしていた。けれど地域学習で里神楽の笛の音を聴いたときから、忘れていた記憶が動き出す。同じ頃、翔太に届いたのは亡くなった祖父の笛と手紙だった。翔太が笛に息を吹き込むと、中から小さな竜が飛び出して――。読みやすく無駄のない文章としっかりした設定で、児童文学の王道ともいえるタイプの物語。作者のファンタジーを描こうという意気込みが感じられて好ましかった。笛の中から現れた小さい竜が、中盤から姿が大きくなり多くを語り始めてからは魅力もリアリティーも半減したのが残念。主人公の祖父の過去を遡る場面あたりからファンタジーの規模が急に壮大なものになってしまい、それをリアルの部分が受け止めきれていないように感じた。物語の終わりで、主人公の翔太がどのように成長し変わったのか、両親に対しての想いはどう変化したのか、現実での気持ちを丁寧に書いてほしかった。
『ソラシ~ラソ ソラシラソラ~』有池らんどさん
祖父と高校三年生の姉と暮らす、小六のレオ。ある冬の日、祖父が急性心筋梗塞で亡くなってしまい、あとには祖父のラーメン屋台とチャルメラ、一冊のノートが残される。地元のお年寄りたちの憩いの場となっていたおじいちゃんの屋台をなくしたくないレオは、なんとか姉のリカに屋台を継がせようとあれこれ画策し――。長野県上田市の山村を舞台にした作品。姉弟の会話はユーモラスで温かみがあり、姉のことが好きなレオとひねくれ者のリカの気持ちが伝わってきた。自分たちらしい工夫を重ね、地域の人たちと関わりながら、少しずつ屋台を引き継いでいくふたりの姿に好感が持てた。ただ一方で、物語の山場である姉と母との関係が図式的で、ふたりの葛藤を描ききれていなかったように思う。文章力はあるのだが、主人公レオが姉の応援役に終始してしまい、姉の物語になってしまったことが惜しまれる。

選考経過

応募総数203編。

12名の編集者で分担し、1次選考。判断に迷う作品については2名以上の編集者が読んでいます。
その結果、以下の13編が2次選考に進みました。

タイトル名著者名2次選考通過
僕らの! 模倣版必殺技澤ちひろ
鼻毛くん―ぼくと、おじいちゃんの絵馬―ユリコ マルティネス
革命のアイリ!山本李奈
ランボー先生と呪いの秘法相模守
おばあちゃんの魔法の本小野勝子
僕たちの挑戦 限界集落前田昌利
クリクリ栗山へいらっしゃいいながきなおこ
空に舞う竜の鳴き声守分結
うたえ! かんたーた和泉智
ソラシ~ラソ ソラシラソラ~有池らんど
歩の幻獣日記上原まなみ
奇跡の戦士 甲羅のカメタン立川治樹
カゲコさん笹嶋友晴

※応募受付順、敬称略

2次選考では、13名の編集者が13編の作品すべてを読んだ上で議論を戦わせ、5編を最終選考に進めることとなりました。
最終選考は、選考委員長の那須正幹先生及び弊社会長、社長、13名の編集者で行いました。

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