ポプラ社

ポプラ社 ポプラ社70周年 メニュー

サイト内検索

サイト内検索
メニューを開く

ポプラ社小説大賞

第1回

受賞作品

第1回ポプラ社小説大賞

受賞作(大賞)
『3分26秒の削除ボーイズ―ぼくと春とコウモリと―』方波見大志
受賞作(優秀賞)
『鉄塔の上から、さようなら』真田コジマ
受賞作(優秀賞)
『見つめていたい娘』長谷川安宅
最終選考作品
  • 『3分26秒の削除ボーイズ-ぼくと春とコウモリと-』 作者名:方波見大志
  • 『鉄塔の上から、さようなら』 作者名:真田コジマ
  • 『見つめていたい娘』 作者名:長谷川安宅
  • 『オーバーホール』 作者名:清水みのり
  • 『太陽のあくび』 作者名:有間香
  • 『フラミンゴ・ミルク』 作者名:山本あや子

講評

全体講評

第1回ポプラ社小説大賞は、海外からも含め、20代~40代を中心に10歳から95歳までの幅広い年齢層の方々から、2746作品という多数のご応募をいただきました。文芸指向の作品もあれば、ファンタジーやライトノベルもあり、ジャンルも多岐に亘りました。

選考にあたってのポリシーは、ジャンルを問わず、編集者が読んでこれを世に出したいと思う作品を選ぶということでした。選考に関わったのは30数名で、最終選考会にはポプラ社の編集者14名が参加しました。まずは、1次選考で92作品に、2次選考で13作品に絞りました。この中には、11歳の方が書いた作品もありました。また、筆力、構成力を感じさせながら、物語が400枚に収めきれていないという判断で、最終候補には残らない作品もありました。
作品自体の力はもとより、書き手の将来性(ポテンシャル)が感じられるかということを重視して、最終候補6作品を決定いたしました。
最終選考会は発表の前日である6月29日に行いました。会の比較的早い段階でまずは4作品に絞り込まれ、その後受賞作品を決めるまでには活発な議論が繰り広げられました。最終的に以下の3作品の受賞が決定しましたが、どれも素晴らしい作品だと自負しています。

第2回ポプラ社小説大賞も、募集を開始しました。今回の応募作品のなかに、作品のもつ大きさに対して400枚(400字詰め原稿用紙換算)という枚数が足らず、無理をして収めているために作品の魅力を減じていると思われる作品が多数見受けられたため、上限の枚数を大幅に増やし、200~800枚としました。締め切りは、2007年2月28日です。第2回も、新たな才能との出会いを希求しています。

  • ポプラ社小説大賞事務局
  • 事務局長 佐久間憲一

最終候補作品講評

大賞 『3分26秒の削除ボーイズ―ぼくと春とコウモリと―』
12歳の直都が手に入れたのは、3分26秒間の出来事を削除することができる奇妙な装置。半信半疑だった直都だが、試しているうち次第に能力を実感し、仲間たちとともに不都合な事件を次々削除していく。次第に直都は装置に頼り始めるが、装置には深刻な副作用があった。装置が引き起こした混乱はついに、少年を衝撃的な事件に巻き込んでいく。
時空改変テーマのSFのような道具立てだが、主眼は装置そのものや由来ではなく、それを手に入れた少年の心の動きにある。主人公を始め、車椅子の親友、無口なクラスメイトの少女、引きこもりの兄など、一人一人の人物造形が際立っており、人間と人間が絡み合う物語を作っていこうという強い意志が感じられた。また、込み入った設定を疾走感をもって書き進める筆力と構成力を備えている。
一方、終盤の展開の速さに筆致が追いつかず、過去の事件の謎解きが十分になされていないなど粗い部分も見られ、完成度の点で他候補作に一歩譲るという意見もあった。最終的には、豊かで新鮮な物語を構築する将来性の点で優れており、第1回の大賞作品にふさわしいということで一致した。
優秀賞 『鉄塔の上から、さようなら』
三組の男女が、それぞれの場所で相手との関係を見つめなおしていく様子を、ある一昼夜を通して描くアンサンブルストーリー。彼らは実は同じ事件を目撃していた。みずみずしい感性を感じさせた。読後感があたたかくさわやかで、ある種のカタルシスも提供する。類型的な部分もあるが、人を描く視点の希望と新しさで独自性を確保している。選考委員の年齢や得意とする小説のジャンルに関わらず、最も多数の評価を得た。読み手の読書経験や趣味によることのない、小説としての普遍的な面白さを持った作品だといえる。
ただし、ストーリーテリングの巧みさに対し、小説として突出する何かを持ちえているかという点で議論となり、大賞ではなく優秀賞となった。第二作、第三作と書き続けるうちに、さらに魅力的な作品を出せると期待している。
優秀賞 『見つめていたい娘』
デパート屋上にあるペットショップで働く28歳のヒロインが、仕事先のタイで遭遇したさまざまな体験を通して、逃れつづけてきた過去の記憶と向き合う勇気をもつまでを、起伏に富んだダイナミックな展開の中で描いていく。最終選考6作のなかで、もっとも評価が分かれた作品。三部構成をとっている本編は、ペットショップでのヒロインの日常をユーモア溢れる筆致で書き出した一部と、タイでヒロインが遭遇する数々のエピソードが、生命の躍動感と混沌の世界の中で表現される二部の間で、「一部」「二部」それぞれの不要論を含めて、選考委員の間で議論が紛糾した。
しかしながら、「幼少期のトラウマの解消」という、ともすると類型的になりがちな題材をもっとも自然にストーリーへと織り込み、エンターテインメントへと昇華させている技量は、人物・情景描写の甘さ、粗のめだつ会話文など、課題を残しながらも、作家としての将来性に大きな可能性を感じさせるという点で意見が一致し、今回の授賞となった。
『フラミンゴ・ミルク』
依頼者のもと、セックス以外のすべての要望に従うという人材斡旋クラブで働く主人公は、あるとき動物園に併設された秘密の会員制レストランに派遣される。そこでは、カバやゴリラなど、本来檻のなかで鑑賞されるはずの動物たちが料理され、皿の上に盛られていた。
独特の魅力をたたえた作品。筆力は多くの選考委員が評価したが、賞に推すかどうかという点では分かれた。かなり読み手を選ぶタイプの作品であることに加え、前半の期待感に対して、後半の展開が単調で小説としての力強さを失っているのが響き、授賞を見送った。
『オーバーホール』
舞台はさびれかけた商店街の時計店。小学5年生の要は、小学生離れした商品知識と気の強さで、店主である祖父とともに店を守っているつもりでいる。そんな店にアルバイトとして頼りなさげな青年が加わり、騒動が繰り広げられる。
人物造形がくっきりとし、展開もメリハリが利いて面白く読める作品。完成度は高いものの、類型的であること、小ぢんまりとまとまり受賞作品とするには奥行きとスケール感が足りないとみなされたことから授賞には至らなかった。
『太陽のあくび』
東京のテレビ通販会社で働く女性と、愛媛のみかん農家の高校生たちが、新種のみかんを売り出すために力を合わせていく。地方の高校生たちの様子と、まったく異なるテレビ通販業界との場面を交互に描き、最後にはそれが完全に絡みあう。
プロットはしっかり組み立てられており、読後感はさわやかだが、ストーリー展開や人物造形に新味を欠くこと、プロット以外の部分が弱いことから、選に漏れた。
ページトップ