2019年4月、今年もポプラ社の「学習に役立つ本」の新刊がそろいました。今回は、水泳・かけっこ・さかあがりなどのコツを楽しい物語で描く体育絵本シリーズ
「うんどうがすきになる絵本」(全5巻)を、編集担当者の視点からご紹介します。
「うんどうがすきになる絵本」(全5巻)
小学校低学年の体育や体力テストなどで行われる種目を厳選して描く体育絵本の5巻セットです。新学習指導要領「運動が苦手な児童や、意欲的ではない児童への指導を工夫する」に対応。登場する動物や人物の動きをまねして、ついつい体を動かしたくなる、読んだ子を「その気」にさせてしまう楽しい物語です。子どもたちだけでも読める「絵本部分」が終わった後の巻末ページには、先生向けの「指導のポイント」ページが付いています。
- 編集M
- 「うんどうがすきになる絵本」(全5巻)編集担当。「このセットを担当して、さかあがりととびばこは、まだできることがわかりました。もともと苦手な水泳とボール投げは、楽しく挑戦できました。20年ぶりのかけっこは、転ばずに完走できました!」
――表紙の子どもたちの浮かない表情がすばらしいですね。器械体操がまったくできなかった小学生のころを思い出して共感します。
編集M できた、やったー! という表紙の本では、運動が苦手な子どもたちは手に取りづらいだろうと考えました。裏表紙では少し手ごたえを感じている表情になっています。
▲『さかあがりが できる!』表紙
――自分で気に入っているページはありますか?
編集M 絵本作家のかたたちが楽しんで描いているのが伝わってくるページですね。3巻なら
『ボールを 遠くに なげられる!』2~3ページ。
▲『ボールを 遠くに なげられる!』2~3ページ
編集M お祭りの日に、主人公のゆうまとしおりが不思議な世界に迷い込む場面です。鳥居のほうへすい寄せられていく二人に、これからどんなお話になるのかな? とワクワクしてもらえる見開きになったと思います。
――各種目の練習方法がお話に織り込まれていますね。
編集M 体育指導の監修は、幼児から小学生向けの体操教室を運営する「体育指導のスタートライン」という団体にお願いしました。各種目について、まず指導のステップを解説していただき、それを数段階に整理して物語に反映しました。巻末の「指導のポイント」もそのステップを生かしています。
▲『かけっこが はやくなる!』10~11ページ
――物語の中にいろいろな動物が指導役で登場するのも面白いです。
編集M 動物を取りあげるにあたって、『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)なども監修されている今泉忠明先生にご協力いただきました。たとえば、人間のようにボールを投げられる動物はいないということを教えていただいたので、3巻
『ボールを 遠くに なげられる!』の巻に登場する動物は、動物でなく「忍者」ということになっています(笑)。各種目に合う動物についても「こんな動物がいるよ」と具体的な提案をくださって、助かりました。
――どの巻も絵本として面白いので、たとえば学級文庫などで置かれていれば、体育を意識しなくても楽しく読めそうです。
編集M 「この本を読めばできるようになる」という実用性も大事ですが、まずはその手前にいる、挑戦をためらっている子どもたちの気持ちをちょっと押すような、やってみようかなと思うきっかけになる本にしたいと思いました。面白くなったのは担当くださった作家のかたがたの力による部分が大きいですね。