「かえるが…ぴょーん!」「こねこが…ぴょーん!」
絵本の中の動物や昆虫たちと一緒に、子どもたちもジャンプしてしまう、ロングセラー絵本
『ぴょーん』。2000年の発売から日本だけでなくアジア各国、そしてフランス・ロシア・アルゼンチンまで(!)世界各国で愛される絵本です。『ぴょーん』のお話、そしてただいま制作中の新作絵本のお話をうかがいに新潟県・長岡市に行ってきました。
松岡達英先生と奥様の紀さん
小さなころは『絵の天才』⁉
―今日は『ぴょーん』のことと、松岡先生が絵本作家になるまでのことを伺いに来ました。
『ぴょーん』の中にでてくる動物や昆虫を見ていると、松岡先生が自然豊かな環境で育った影響がうかがえます。先生は、小さなころどんな遊びをしていたんですか?子どものころのお話を聞かせてください。
松岡先生
小学校の頃は、山で栗とかぶどうとかとったりして遊んでたね。高学年のときくらいにオオムラサキをとって、それからずっとチョウに夢中だね、チョウは一番目立つから。
あと、うちの裏のほうにある栖吉川(すよしがわ)っていう川がすごく生物が多くて、そこでは水遊びしてたね。アユにあったり、ウナギにあったり、まだタガメもいるころで、水の生きものにも興味をもったんだ。
―今、目の前にも見える、雪におおわれた山々ですね。絵は、そのころから描かれていたんですか?
松岡先生
新聞の余白に欲しいものをちょこちょこっと描いてたよ。自転車とかグローブとかしっかり見てきて描いたんだけど、全然買ってくれなかったね(笑)。
親父も絵を描くのが好きで、その絵を見ると「こういう風に描くんだ…」ってうっとりしたし、昔からスーパーリアルな絵が好きだったんだね。
小学校2年生くらいの子がリアルに絵を描くと、「若くしてこのリアルさか!」って先生もほめてくれて、だから小学生のあいだは絵の天才で、中学に入ってからだんだん「絵ってこんなもんじゃないな」ってわかってきたんだ。描写力とアートのちがいみたいなものが。
紀さん
見たもの何でも描きたかったから、校庭にヘリコプターが飛んできたときも、1人だけ教室の外に追いかけていっちゃったりね。
松岡先生
こんなすごいものが来たんだから、クラスのほとんどが飛びだすと思ったんだけどね(笑)
子どもの頃のことを話す松岡先生
―昆虫だけでなく、飛行機やヘリも好きだったんですね。昆虫は、中学生や高校生になっても、ずっと好きだったんですか?
松岡先生
そうだよ。昆虫の趣味がずっと続くってなかなかなくて、それが続いたのが僕だね。とにかく新しい虫に出会うのが好きなんだ。高校のときに勉強していた化学とか電気とか、目に見えないものは好きじゃないんだね。
デザインの仕事から、自然を描くイラストレーターへ
―高校を卒業されたあとは、どうされたんですか?
松岡先生
群馬の高崎に就職しに行ったんだけど、群馬のチョウが見たかっただけなんだよね(笑)。だから、すぐ嫌になっちゃった。そのあと東京で美術の学校に通って、デザインの仕事をするようになって、若い人たちで集まって一緒に展覧会を開いたりしたんだ。そこで出版社の編集者が声をかけてくれて、絵の仕事を始めたんだね。
―楽しそうですね!それから、だんだんと絵本のお仕事をされはじめたんですか?
松岡先生
うん、世界中いろんな場所に取材に行ったよ。取材に行くと、どんなところでも、バス停でも、下を見ると草があって、生きものがいるじゃない。それだけで楽しいんだよ。自然が好きになると、全然退屈しなくていいよ。
紀さん
車で帰ってきたら、すごい丸太みたいなヘビがいたこともあったわね。そうしたらこの人が、写真撮るって言いだして……私は「開けないでー!」って。
松岡先生
オーストラリアのニシキヘビだね。
―先生にとっては、またとないチャンスですもんね(笑)。
アトリエでお出迎えしてくれる、かえるくん。
『ぴょーん』のかえると、下にいるのは中国版オリジナル絵本に出てくる女の子・ぴんくちゃんです。
飛行機で思いついた『ぴょーん』のアイデア
―つづいて、2000年に発売させていただき、今年ミリオンセラーになりました『ぴょーん』について、制作のエピソードや、先生のお気に入りのポイントを教えてください。
松岡先生
こんな読みやすい本ないよね。だれでも読めるし。恐竜の絵本を作る取材でアメリカに行って、その帰りの飛行機に乗っていたとき、急にゆれて、体がぴょーん!と上がる感じがしてね。そのとき、いろいろな生きものが「ぴょーん!」と飛ぶアイデアをひらめいたんだ。
―出てくる動物はすぐに決まったんですか?
松岡先生
動物は、ひとつ出てくるとどんどん出てきて、すぐに決まったし、跳べないカタツムリのアイデアも、にわとりとひよこを黒いページに置くのもすぐ決まったよ。どの絵本もそうだけど、売れるとか、売れないとかそんなこと考えないで、自分が楽しめればいいと思って作ってるからね。
―先生は悩んだりしないで、どんどんアイデアを思いつくんですか?
松岡先生
アイデアがどんどん出てくるのには自信があるよ。外国の絵本やイラストレーションの本もたくさん見ていたしね。でも『ぴょーん』はやっぱり、すごく新鮮なアイデアで作ってるよね。集中して考えたのかな。あと、たくさん描きこんで、手のかかる絵本をたくさん描いてたから、シンプルな絵に憧れてたんだ。描くのもちょっと簡単になるし(笑)
―簡単なんて、そんな……(恐縮)。『ぴょーん』の読み聞かせをすると、子どもたちがかならず跳びはねますよね。先生は日本全国で子どもたちが跳んでいるのをどう思いますか?
松岡先生
絵本をすごくたくさん作ってきたから、そのご褒美かなって思ってるよね。作為的に作った本じゃないからね。いろんなところで読み聞かせなんかを熱心にしているけど、僕の頭の中では、たったひとりのためにその本があればいいと思っていて、あんまり大勢のことを考えて作るわけじゃないんだ。
『ぴょーん』お話の後は、新作絵本について伺います。
かっこいいバッタロボットに乗って、オーストラリアやボルネオ、ニュージーランドに冒険に出かける絵本『バッタロボットのぼうけん(仮)』です。
新作は、新しい画法にチャレンジした意欲作!
―今、先生が描かれている新作『バッタロボットのぼうけん(仮)』ですが、原画を見せていただいて、ち密に描かれた自然の迫力にただただびっくりしました。
松岡先生
今回はちょっとだけ新しい描き方をしていて、背景に写真を貼って、その上から絵の具で描いたり、ロボットも貼り絵をした上から描いたりしてるんだよ。
―(近くで原画をよく見ると、たくさんのパーツが貼られて、組み合わされていて、改めてびっくり……)。ほんとだ、このバッタロボットも赤い画用紙の上から、絵具で色を足したものを貼っているんですね……。なぜ、世界を旅する乗り物ロボットをバッタにされたんですか?
松岡先生
バッタが跳ねるのを見るのが好きで、スマートに跳ぶ姿がすごくかっこいいから。ほかの昆虫は重そうだし、トンボも翅(はね)がやぶれちゃいそうでしょ。
―『ぴょーん』よりは大きい子向けの絵本ですが、先生は赤ちゃん絵本をつくるときと、大きい子向けの絵本を作るときは、ちがう気持ちで描かれるんですか?
松岡先生
全然ちがわないよ。赤ちゃん絵本を作るときは、赤ちゃんの顔をよーく見て、アイコンタクトをとって、じーっと観察するけど、同じ自然を描いているから、リアルに描いている絵本だって、赤ちゃんにも見てほしいんだ。『バッタロボットのぼうけん』も、色んな歳の子が楽しんでくれると思うよね。
ずっと昆虫が好きで、自然が好きで、絵本を描く仕事をしているけど、本当に楽しい仕事だよね。こんなおもしろい仕事なのに、誰か僕みたいなことやらないのかなって思うよね。世界中に自然があるから、無限に描くことがあるよね。
―本当ですね。作家さんの視点によって、きっとさまざまな自然の切り口があるんだろうなと思います。
小さいころから自然に親しみ、昆虫や動物が大好きだった松岡先生にたくさんのお話を伺い、
その後長岡の自然散策にも連れてっていただき、取材を終えました。
取材のあとは「標本見せてあげようか?」と、貴重な昆虫のコレクションも見せていただきました。
■松岡先生のアトリエ■
アトリエには、先生が流木や空き缶など色々なものを使って作った楽しい立体作品がたくさん。
トンボと、トンボを追っかける虫とり少年(松岡先生?)は流木から作ったもの。いつまでたっても、捕まえることはできません。
空き箱でつくったカメレオン。
すてきなお月さまのカーブは、なんとお盆の形を利用して作られたもの!
ビーズで作られたカメレオンや、ぴょんぴょんバッタのおもちゃ。
天井からつるされたアホウドリ。
時計の箱も、絵の額もすべて手作りです。