男手ひとつで育ててくれた父のもとを離れ、ひとりで暮らしていた雫は病と闘っていたが、ある日医師から余命を告げられる。最後の日々を過ごす場所として、瀬戸内の島にあるホスピスを選んだ雫は、穏やかな島の景色の中で本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者が生きている間にもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫は選べずにいた。
母に癌が見つかったことで、わたしは数年ぶりに母と電話で話しました。電話口で、「死ぬのが怖い」と怯える母に、わたしはこう言い放ちました。「誰でも死ぬんだよ」けれど、世の中には、母のように、死を得体の知れない恐怖と感じている人の方が、圧倒的に多いのかもしれません。母の死には間に合いませんでしたが、読んだ人が、少しでも死ぬのが怖くなくなるような物語を書きたい、と思い『ライオンのおやつ』を執筆しました。 おなかにも心にもとびきり優しい、お粥みたいな物語になっていたら嬉しいです。
1973年生まれ。2008年『食堂かたつむり』でデビュー。以降数多くの作品が様々な国で出版されている。『食堂かたつむり』は、2010年に映画化され、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞。2012年には『つるかめ助産院』が、2017年には『ツバキ文具店』がNHKでテレビドラマ化され、『ツバキ文具店』と『キラキラ共和国』は「本屋大賞」にノミネートされた。その他著書に『喋々喃々』『ファミリーツリー』『リボン』『ミ・ト・ン』など。