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ほぼ週刊連載 幡野さんの日記のような写真たち

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 妻のおじいちゃんが老衰で亡くなった。いつも誰かのことを気にかけているおじいちゃんで、ぼくが病気になったとき、一緒に泣いてくれた人だった。

 ぼくはおじいちゃんから戦時中の話をきくのが好きだった。B29爆撃機が襲来した八王子大空襲や、空襲の数日後には近所を走る汽車が戦闘機の銃撃をうけた日のことや、巨大地下壕でたくさんの人が働いていたことなど、いろんなことを教えてくれた。

 おじいちゃんは相続のことはもちろんのこと、棺にいれるモノ一式までカゴにまとめていた。「おれはいつ死んでもいいんだ」それが口ぐせだったけど、遺影写真は用意していなかった。

 おじいちゃんの家に遊びにいった帰りに、ぼくが撮影した玄関先で手をふって見送っているナイスな笑顔の写真を遺影に使わせてほしいと妻にお願いされた。ナイスな笑顔が上手に切り取られてスーツ姿に合成されていた。若い人は顔を盛り、ご老人は服を盛る需要があるのだろう。

 スーツになった写真とは別に、切り取られていない写真も家族に渡した。写真家として思うことだけど、その方がおじいちゃんの人柄を知る人にはきっといい。

 葬儀に参列して納骨まで見届けた息子が「おじいちゃん、しんじゃっていなくなっちゃったね」とさびしそうにいった。5歳の息子の言葉におもわずドキッとして言葉につまる。なんて答えよう。

 うちは特定の信仰はないうえに、宗教のことをちゃんと勉強していないので、どう答えていいかわからない。どう答えようか迷う。キリスト的に天国にいるとか、お空から見守ってるだとか、仏教的に生まれ変わっているだとか、お盆のときに帰ってくるから虫を殺しちゃいけないだとか、いったいどう声を掛ければいいんだろう。

 おじいちゃんは息子の世界でいちばんの長老であり、息子自身にも、お母さんとお父さんにも良くしてくれた、大好きな人なのだ。息子が大人になる頃には、もしかしたらおじいちゃんの記憶は薄れているかもしれない。

 でも6歳や7歳や8歳の頃はきっと覚えているだろう。5歳とはいえ息子はひ孫であり遺族である。息子にもグリーフケアは必要だ。「こうやっておじいちゃんのことを思い出して、一緒におじいちゃんの話をしようね。」と答えた。

 妻とぼくはおじいちゃんの葬式がすんだあとに、二人でおじいちゃんの話をした。そして一緒に泣いた。少しだけ悲しみが和らいで心が軽くなった。

 死ぬということがどういうことか、それをいちばん最初に息子に教えてくれたのはおじいちゃんだった。あたまが上がらない、そんな気持ちばかりだ。うちではいつも笑顔のおじいちゃんが生きている。

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