財布を落とした。渋谷のホテルに宿泊したときに落としたようだ。財布を落としたのは2年ぶり4回目ぐらいだ。ぼくは財布だけでなくカメラをなくしたりもする。
『写真家にとってカメラは命よりも大切なもの』なんていったりするけど、ビックカメラで値引きされてポイントまで加算されて売られるものが命よりも大切なわけがない。どんだけ写真家の命は安いんだ。この言葉はきっとカメラ一台で家が一軒建つような1940年代か50年代の名残なんじゃないだろうか。
よく財布を落とすので、ぼくのスマホケースにはクレジットカードと1万札がはいっている。もちろんQUICPayもモバイルSuicaも重宝しているので、財布がないから外出できないということも、帰宅ができないという八方塞がりは防げている。
財布にはGPSのカードもはいっていて、どこで失くしたかわかるようになっている。だから財布を落としてもさほど焦ることはない。だからなのかよけいに緊張感が薄れているような気もする。
ぼくの財布はホテルの清掃員の方がみつけてくれたようだ。ホテルから連絡をうけたときに『1割ぐらいお金抜いちゃっていいですよ』と半分本気、半分冗談でいったのだけど、笑われたので冗談ととられたようだ。
正直者が損をするのではなくて正直者が得をするような社会であってほしいから、なにかしら得があっていいのだけど、ひろった財布から現金を抜くのはさすがに気がひけるだろうし、ホテルという性質上、謝礼金はうけとりにくいのかもしれない。
ちょうど写真展会場で気仙沼の物産を売っていたので、これをお礼にしようとぼくのおすすめ気仙沼物産をパックにしてホテルにお渡しした。免許証やクレジットカードやキャッシュカードが入った財布だ、再発行の手続きは面倒だろうし、なによりも不正使用やスキミングされればとても大変なことになる。
ホテルの方は恐縮していたが、とてつもなくグッジョブなことをしてくれたのだ。ありがとう。渋谷で宿泊するときはこのホテルにいつも泊まろうとおもう。手元に戻ってきた財布を確認すると現金が9000円しかはいっていなかった。1割抜くと900円だ。もしかしたらホテルの人が笑った理由はこれかもしれない。
いろんなものを失くしたり落としたりするんだけど、だいたい正直者さんのおかげで手元にもどってくる。本当に感謝している、だからぼくも正直者でいようとおもえる。