あんまりいいたくはないのだけど、外出自粛になって料理ばかりしている。
料理どころか掃除や本棚の整理など家事がはかどっている。
なんでいいたくないのかというと、在宅勤務になって働くパパさんやママさんたちが「家にいるんだから、家事ぐらいできるでしょ」という誤解の風をうけてほしくないし、なによりいろんな原稿を待たせてしまっているので「料理してます」とはちょっといいにくい。
たけのこがスーパーで売っていた、皮のついたたけのこだ。隣には皮がむかれて水煮されたパックのものもある。この日のごはんは天ぷらにした。皮つきのたけのこをカゴにほうりこんで、エビやキスや玉ねぎなどいろんな食材を買った。
人生ではじめてたけのこの皮をむいた。むいてもむいてもたけのこが出てこないという逸話は本当だった。そしていざたけのこがお目見えすると、いったいどこからどこまでが食べられる範囲なのかもよくわからない。
なんとなくざっくりと切って、衣をつけて油であげる。ぼくが天ぷらをつくると、なぜかあつぼったくなる。お店で食べるような繊細な天ぷらにならない。衣の色も黄金というよりも、すこし茶っぽい。たけのこの天ぷらというよりも、フライドたけのこというほうがしっくりくる。
エビはなんだかエビフライっぽいし、玉ねぎはオニオンリングのようだ。キスにいたってはアジフライのようだけど、さすがにキスはアジにならない。
とにかく天ぷらっぽくないけど、味見のためにフライドたけのこを一つ食べる…美味い!!
見た目がアレだけど美味しいじゃない……か……ん?
なんか口の中が痛い、口の細胞を破壊されるような感じだ。すんごい痛いわけじゃないけど、炭酸ではない飲み物がほしくなる。
「ちゃんとアク抜きした?」と妻に聞かれる、なにそれ?
たけのこは米ぬかや重曹をつかってアク抜きをしなければならないらしい。
知らなかった、というかちょっと面倒くさい。
アク抜きしないたけのこが凶暴なものだとは知らなかった。
この日の食卓からフライドたけのこが消えた。
翌日、たけのこご飯とたけのこの味噌汁をつくった。
偉そうにいっちゃうけど、もちろんアク抜きされてパックされたものを買った。
恐る恐るたけのこを食べる妻をみて、吹き出しそうになってしまった。