近所で酉の市をやっていた。
屋台がたくさんでていて、いつもとちがう街にみんなそわそわしているようだった。
焼きそばの屋台に並んだ、まだソバをいれはじめたのか、もうすこし時間がかかるといわれた。30mも歩けば似たようなクオリティで似たような価格の焼きそばの屋台はある。
なんなら隣の広島焼でも本当はいいんだ。
でもなんとなく、この焼きそば屋さんで買いたかった。
焼きそばを作る大将と雑談をしていて、それは正解だったと感じた。
いかにもテキ屋さんっぽい風貌の大将はもともとお役所に勤める公務員だったそうだ。仕事が嫌になり精神的にも追い込まれてしまい、好きなことを仕事にしようとテキ屋の仕事をしつつ、焼肉屋でも修行をしていて自分で焼肉屋さんを開業するそうだ。
テキ屋業界はブラックな側面がおおく、10代の若い子がはいってきても長時間労働と仕事に見合わない給料が原因で、オレオレ詐欺の方が儲かるといって、辞めてしまう子も少なくないそうだ。
焼きそばができるまでのみじかい時間で、明るい表情でいろいろと話してくれた。彼がはまる場所は公務員ではなかったのだ、きっと公務員を辞めるときは周囲の人に反対もされただろう。
公務員のときよりも、いまのほうが人生たのしいですよね、と声をかけると。
「ああ、たいへんなこともあるけど圧倒的にたのしいねぇ!!」と話してくれた。
オレオレ詐偽に流れてしまった若い子にも、うまくハマる場所が見つかってほしい。
もしもオレオレ詐偽にうまくハマれるなら、優秀な営業マンにもなれるよ。
屋台の焼きそばは、どこで食べてもおなじような値段とおなじような味だ。
だからこそ、たのしい会話ができる人から買いたい。
焼きそばよりも、美味しいものがえられる。