株式会社ポプラ社と東京大学Cedep「子どもと絵本・本に関する研究」
第1回目記者発表の中で、教育制度の視点から見た共同研究の意義について語られた、東京⼤学⼤学院教育学研究科⻑である秋田喜代美教授の挨拶をこちらに紹介します。
▲締めくくりの挨拶をする秋田喜代美教授
本日はようこそお越しくださいまして有難うございます。東京大学教育学研究部は学部創立以来70周年度が本年度でございます。立ち上げた時以来、あらゆる子供の公教育を考えるというのが私どもの大学のミッションとなっております。
その公教育という時に、
戦後いち早く、学校図書館を必ず全ての学校の中に置くという事を決めたという事が大きな特徴でございます。特定の思想だけではなく、
図書館で多様な本と出合うことが、これからの日本の民主主義をつくる基本になるというような考え方から、子ども達の本を豊かにという思想が始まっているわけでございます。
▲秋田喜代美教授
2000年に
「ブックスタート」という活動がはじまりました。その立ち上げに私も立ち会わせて頂きましたが、まさに、"Share books with your baby!"「喜びを子ども達と共に、絵本を通して幸せを分かち合う」という理念の元で立ち上がって20年になるわけであります。そして、
乳児期だけでなく幼児期も含め、今後の豊かな人生の為に、本と出合う習慣を形成する事が第一だと考えております。
昨年発行されました文部科学省の第4次こども読書推進の計画の座長もさせて頂きました。その中で初めて、
乳幼児期からの発達段階に応じた本との出会いその形成が極めて重要であり、突然読解力が下がったからその時期に本を読めばいいというものではなく、まさに乳幼児期から生涯にわたる豊かな人生を保証していく時に本との出会いが重要であろうという事が書かれ、計画の中にも入れられているわけです。
しかしながら、実際には、先ほど高橋助教からも説明がありましたけども、
乳幼児期、多くのお子さんが保育園、幼稚園、そして認定こども園で早期から施設に通うというような時代になってきているわけです。
そこ(幼児教育施設)で、どれだけ豊かな本との出会いが保証されているのかという事がとても重要になってきていると考えております。
また、先程のデータでもありましたように、絵本が豊かにあるご家庭がある一方で、
経済格差が大きくなり、本が家に十分に無いご家庭でも、保育所や幼稚園において、その様な環境が保証されるというような事が重要になってくると思います。
しかし、実際に今回結果を見てみますと、園の中でも散らばりがあり、それは何故かと考えますと、目先では待機児童というものが数が減少したかどうかという事だけが議論になっているわけです。
絵本も豊かな環境の1つでござますが、そこが本当に保証されているのかとみると、新設園等では本当に不足しております。それを、実際には地域の図書館が例えば団体貸出し等で保育所等に貸出しをして等で支えている実態が見えて来ます。その為に、
園そのものが、民営も公立もありますが、補助金が十分に保証されていない実態も見えて参りました。
これまで小中学校の学校図書館の施設や財源の重要性も一般財源になっておりますので図書の購入が地域によって違っているのも分かっています。乳幼児の就学前においては、もっと差が大きいことがみえてきております。そうした中で、私達は、
基礎の調査を積み重ねながら、エビデンスに基づきながら、どういったいう形で子ども達を取巻く豊かなメディア環境を保証できればいいのかを考えていきたいという風に考えております。
繰り返しお話しておりますが、これからの時代、
紙の本も極めて重要ではありますが、デジタルメディアにつきましては、0歳代から経験してるという時に、一体何が起こっているのか、基礎のメカニズム、その特質を分かってくことも重要だと思います。
絵本と言うのも、様々なジャンルによって子どもの経験は違ってくるものです。それらについてもどの様な経験が実際に園の中でなされているのかという事は、現在、「絵本は良いですね」、「各園で読んでいます」という事は分かっていますが、具体的にそれ以上の調査研究が無いという実態の中で、ご家庭で、(園などの)施設で、どのように行われているのかを、私どもはポプラ社さんとともに、子ども達がのびのびと、生涯幸せに人生を送るために、何が出来るのかを考えていきたいと思っています。
その第一歩が、本日のお話ご報告となっているかと思います。詳細な事までは今回明らかには出来ていないわけですが、何を研究していけば良いかが分かりましたし、また御存じのように、
学校図書館につきましては、戦後毎年調査をしている事でその変化が追い続けられております。しかし、乳幼児につきましては、全く調査がございません。乳児期幼児期からの教育の連続性が極めて重要だという事も分かっているわけです。私どもは継続的に研究していければと考えております。
もっとこのような事があった方が良いのではないかという事がございましたら、みなさまのお声を聞かせて頂きながら対話をしながら、センター長のリードの元で研究を進めて行ければと思っております。以上多少のコメントをさせて頂きました。
※強調及び()内の補足はポプラ社
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