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多数決で決まったことって正しいの?〜『答えのない道徳の問題 どう解く?』を教材にした、道徳の授業の進め方【中学校編】〜

平成30年度より、全国の小学校で教科化された道徳。平成31年度からは、いよいよ中学校でも教科化がスタートします。それに先がけ、すでに道徳の授業を行っている中学校も少なくありません。埼玉県・戸田市立戸田東中学校もその一つ。

この日の授業で使用した教材は、テレビ・新聞・WEBなどで話題となっている書籍『答えのない道徳の問題 どう解く?』(ポプラ社刊/以下『どう解く?』)。子どもたちの意見を引き出し、議論を活性化させるのに適していると、小学校の先生方からも評判の1冊です。



「きょうは、いつも使っている副読本は使わずに道徳の授業をしたいと思います。テーマは、これです」。真島清貴先生が、黒板に大きな文字で次のように書きました。

「平等 どう解く?」

これから何が始まるのだろうという、好奇心に満ちた生徒たちの表情を見渡して、真島先生が問い掛けます。「平等にものごとを決めたいとき、これまでみなさんはどんな方法を選んできましたか?」。「じゃんけん」「くじ」「多数決」。生徒たちがすぐに反応できるのは、それだけ生活に密接したテーマだからでしょう。続けて真島先生は『どう解く?』のページを開き、このようなエピソードを紹介しました。

「賛成3、反対37。多数決をしたら、ボクの意見は通らなかった。人数が多いほうが、正しいってどうして言えるんだろう?」

このクラスの生徒数は38名。同じような人数での多数決の結果に、生徒たちの表情が少しだけ固くなりました。意見の通らなかった「ボク」の立場に、自分自身を置き換えているのかもしれません。「いまからプリントを配ります。まずはこの問いに対する自分の考えを記入してください。これが正解だっていう答えはありません。あなたがたの意見を率直に書いてください」



すぐに書き始める子。黒板に書かれた問いをみつめる子。うつむいて考え込む子。シャープペンシルを走らせ続ける子。書いては消してを繰り返す子。約8分間、教室は静寂に包まれました。「では、自分の意見を班で発表しあってください。人の意見を聞いた上で考えが変わったら、それをまたプリントに記入してください」

戸田東中ではICTの活用が進んでおり、生徒にタブレット端末が配布されています。端末を使いプリントを撮影することで、それぞれの班でまとめた意見が教壇の横にあるモニタに映し出されました。生徒たちは手元の端末で、各班の意見を見比べることもできるようです。



「多くの人が賛成した意見を採用するほうが、多くの人に納得してもらえるから」
「人数の多い意見のほうが、合っている確率が高いから」
「説得力があるから」
「多数決とはそういうルールだから」
「そんな疑問を持つくらいなら、最初から多数決をしなければいい」
「少ない意見を採用すると、たくさんの人がやる気をなくすから」

多数決を肯定する意見が次々と発表されます。生徒たち自身が、さまざまな決め事を多数決で決めてきたからでしょうか。そうした中、教室の空気が変わる意見も発表されました。



「数学など正しい答えが1つしかない場合は話が別だけど、答えのないテーマでみんなが意見を出し合ったとき、多数決の結果で人数の多い意見が正しいっていうのは違うと思う」
「そもそも人数が多い方が正しいって、誰が決めたんだろう?多いからなんなのか、少ないからってなんなのか?」

友だちの多様な意見に耳を傾けた生徒たちは、ふたたびプリントに向かいます。「多数決をするときに、必要な考え方ってなんだろうね? どういうふうに考えれば、平等な多数決をできるんだろう?」。一人ひとりに問い掛けるように、真島先生が語りかけます。

残りの授業時間いっぱいまで使って書いたプリントは回収されました。それぞれの意見を発表する代わりに、真島先生はふたたび『どう解く?』のページを開き、児童文学作家・那須正幹さんの意見を紹介します。

今ではだれも信じませんが、むかしの人は、地球の周りを太陽がまわっていると考えていました。みんなの考えはまちがっていたわけですね。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というジョークがはやったことがあります。みんなで渡っていたときに車が突っ込んでくればどうなるでしょう。笑いごとではすまされません。クラスのみんなが賛成したことでも、間違っていると思ったら、堂々と反対意見を述べましょう。コペルニクスは、こうして地球が太陽の周りをまわっていることを証明したのですから。那須正幹(児童文学作家)
「みなさんの意見の中にも、賛成が多いからって正しいわけじゃないという意見がありました。ただ単に多数決をするだけでなく、どうすればみんなの意見を取り入れることができるのか、そういうことを考えながらこれからやっていけたらいいんじゃないかな」

真島先生の言葉に、生徒たちは何を思ったのでしょう。

●授業を終えて
【生徒が授業の最後でプリントに記した意見】
「多数決をする前に、まず話し合う。話し合いで決まらなかったら、多数決をする」
「多数決の結果、自分の意見が通らないのはしょうがないと思う。もしもそれに不満があるなら、多数決じゃない決め方で決めればよい」
「他のやり方を考えた上で、それでもやっぱり多数決がいちばんいい方法だと思うなら、自分の意見に賛成してくれる人を増やすために、言葉で説得するしかないと思う」
「たとえば文化祭などで出し物をつくるとき、全員の意見を取り入れたら平等になる。すべては無理でも、少しでも多くの意見を取り入れることができれば、平等な多数決に近づくと思う」

【真島先生のコメント】
「副読本を使った普段の道徳に比べると、生徒たちは意見を出しやすかったようです。今後クラスの決め事を、多数決で決める場面もあるでしょう。今日の授業を思い出し、お互いの意見を出し合いながら決めてくれたらいいですね」

【授業を見学した小学校教諭のコメント】
「さすが中学生、一つ一つの意見の根拠がとてもしっかりしていました。小学生に比べ深い意見が多く出て、興味深く聞けました。自意識が高まる年頃なので、自分の意見を言うのは恥ずかしいと感じる生徒もいたと思います。小学校でもタブレットを効果的に使えば、より多様な意見を引き出せるかもしれませんね」

「どう解く?」特設サイトはこちら
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