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追悼「大好きな本のなかに、止まり木のような居場所を」 森山京(もりやまみやこ)先生が作品に託したもの――

1月7日、童話作家の森山京(もりやま みやこ)先生が88歳でお亡くなりになりました。森山先生は、20代、30代を、コピーライターとして時代の最先端で目覚ましい活躍を続けられ、化粧品の名コピー「25歳はお肌の曲がり角」の作者としても知られています。
多忙を極めたお仕事の合間の楽しみとして書き続けた物語「こりすが五ひき」を童話の賞に応募して、入選。その作品が出版されることになり、40歳の時に童話作家としてデビューすることになりました。
それから約50年、その卓越したセンスで、数多くの優れた絵本、童話、児童文学作品を生み出してこられました。主に動物たちを擬人化して子どもの感性や心の動きをいきいきと描きだした物語は、平明でありながら高い文学性とリリシズムを持ち、幼い子どもから大人まで幅広い層の読者の心をひきつけてやみません。

2009年には、それまでに発表された作品から選りすぐった『もりやまみやこ童話選・1~5』をポプラ社から刊行。ここでは、その「あとがき」をご紹介しながら、森山先生が作品に託した想いをお伝えしたいと思います。

お元気だったころの森山京先生<br>雑誌:月刊MOEに掲載されたお気に入りのポートレート(撮影:水野聖二)
お元気だったころの森山京先生
雑誌:月刊MOEに掲載されたお気に入りのポートレート(撮影:水野聖二)

■時に痛みをともなうことも成長の証
『もりやまみやこ童話選1』に収められた代表作「きいろいばけつ」は、主人公のきつねのこが、ずっとほしいと思っていた黄色いばけつを見つけ、1週間待っても持ち主が現れなかったら自分のものにしようと決めて、ばけつとともに1日1日を大切にすごしますが、1週間後にばけつはなくなってしまう、というストーリーの童話です。
この作品には、かつてないほど多くの手紙が森山先生のもとに寄せられました。幼い読者たちからの手紙は、何とかきつねのこを慰めたいという思いにあふれ、おもちゃの黄色いバケツを送ってきた子までいたそうです。
人生は願った通りにならないことが多いけれど、どんなにつらいときにも喜びはあるし、悲しみを経て子どもたちは成長する、と森山先生はよく語っていらっしゃいました。その想いは、作品に出会ってから時間を経るほど、子どもたちの心に沁みとおっていくのかもしれません。

真実を知ることは時に痛みをともないますが、それもまた成長の証でしょう。
〜中略〜きつねの子を思いやって涙した子どもも、小学生になると相手の心によりそって深く思いをめぐらせるようになります。ばけつをうしなったかわり、輝ける出会いの時と忘れがたい思い出がきつねの子の胸に残ります。「いいんだよ、もう」と、きっぱりいいきったとき、読者もともにうなずいてくれるのです。(『もりやまみやこ童話選1』のあとがきより)


■本の中に、止まり木のような自分だけの居場所を
森山先生は、童話をお書きになるうえで、声に出して読んだときに文章のリズムや響きがよいこと、そして、話がわかりやすいことを心がけていらっしゃいましたが、同時に、子どもたちにとって読みやすくてやさしいことがいいとは限らないとお考えでした。本の中をすいすいと通り抜けていくだけでは、登場人物を自分と重ね合わせたり、共感したりする余裕をもてないからです。

時に立ちどまってきょろきょろしたり、途中でちょっとあともどりをしたり……。時間はかかるかもしれないけれど、そうした本との出会いが幼い人にはあっていいのだと思います。大好きな本のなかに、止まり木のような、自分だけの居場所を見つけてもらいたいのです。(『もりやまみやこ童話選2』のあとがきより)

「こうさぎのジャムつくり」「おかあさんになったつもり」という初期の作品を『もりやまみやこ童話選2』に収録するにあたって、手直ししたい箇所も目についたけれど、これらの作品に流れるゆっくりした時間、居心地のいいたっぷりした世界を味わってほしいという理由から、なるべく原文のまま残すことになさったそうです。ゴールに向かってわき目もふらずに進むだけではなく、「止まり木」のような特別な場所を本の中に見つけてもらいたいという森山先生の願いが伝わるエピソードです。

「もりやまみやこ童話選・1~5」書影をクリックすると本のページにジャンプします
「もりやまみやこ童話選・1~5」
▲書影をクリックすると本のページにジャンプします▲

■美しい言葉や未知の言葉に、敏感であってほしい
かつてコピーライター志望の高校生に、「大切なのは高い創造性と想像力、そして新しいものへの盛んな好奇心」とアドバイスなさった森山先生ですが、その姿勢は創作活動においても変わらず、常に高いプロ意識で仕事に取り組まれました。磨き抜かれた言葉のセンスは、森山先生の作品を特別なものにしています。
美しい言葉や未知のすばらしい言葉にめぐりあったときに、はっと気づいてうれしがる、言葉に敏感な子どもであってほしいという願い、また子どもの頃におぼえた言葉は体にしみこんでいるという強い実感から、今の時代にはなじみの薄い昔からの言葉をさりげなくお使いになることもありました。
たとえば、「いいものもらった」(『もりやまみやこ童話選5』収録)の最後のシーン。小雨が降る場面で、「小雨」ではなく「しぐれ」という言葉を選ばれた理由は、語感の良さと、晩秋の日本の山里には「しぐれ」こそ似つかわしいと思われたからだそうです。

幼い読者にはその意味を問われないかぎり、説明の必要はないでしょう。うたの言葉のようにすらすらと読みながし、いつか何かの折に「そうそう、しぐれ……」と思い起こしてくれればいいのです。(『もりやまみやこ童話選5』のあとがきより)

■童話作家として、一人の母親として
 森山先生は、童話作家であると同時に、一人のお母さんでもありました。目の前にいる子どもを作品のモデルにしたことはないと語っていらっしゃいますが、ご子息が幼いころの思い出話には、愛情深いお母さんのお顔が垣間見えます。
幼稚園の送り迎えの道を、親子で手をつないで足並みそろえ、ご子息のおしゃべりに相づちを打ったり笑い声をあげたりしたこと。就寝前のひととき、絵本や童話の読み聞かせをしていたけれど、先に眠気をもよおすのは決まって森山先生のほうで、なかなか読み終わらない一冊をうらめしく思ったこと――。共感なさる親御さんも多いのではないでしょうか。
そんな母親としての思いから生まれたのが、『もりやまみやこ童話選3』に収録された「おはなしぽっちり」のシリーズです。折々の季節に即したテーマが、400字詰め原稿用紙2枚ほどのごく短いお話として綴られ、幼い子どもの一人読みにも、大人が読み聞かせをするのにもぴったりと大好評を博し、長く読み継がれています。

読みっぱなしにしないで、読んだ本をなかだちに、親と子がそれぞれの言葉で語りあう。そんなささやかな時間で一日をしめくくることができたら――と。(『もりやまみやこ童話選3』のあとがきより)

透徹したまなざしで、人間の本質や人生の機微を鮮やかにとらえ、喜びも悲しみも等しく大切なものとして描き続けた森山先生。おっとりとした不器用なタイプの主人公を好んで描かれ、子どもたちに温かい励ましを送り続けられました。
これからも、森山先生の本を開けばいつでも、ゆったりと過ごすことができる「止まり木」を見つけることができるのです。それは、私たちにとって決して失われることのない宝物です。

文・吉田有希/ポプラ社編集部

プロフィール

森山京 (もりやまみやこ)
1929(昭和4)年7月10日、東京都生まれ。兵庫県立福崎高等女学校卒業。神戸女学院大中退。小学校時代のほとんどを旧満州藩陽で過ごす。
大阪阪急百貨店宣伝部を経て、フリーのコピーライターとして独立後、日本デザインセンターで活躍する。化粧品のCMコピー「25歳はお肌の曲がり角」は、あまりにも有名。
1968年『こりすが五ひき』で講談社児童文学新人賞佳作入選。1969年、同社より刊行され、児童文学作家としてデビューする。1983年刊『ねこのしゃしんかん』(講談社)でボローニャ国際児童図書展エルバ賞特別賞受賞。その後、1989年『きいろいばけつ』にはじまる「きつねのこ」シリーズ(全5巻・あかね書房)で路傍の石幼少年文学賞、1990年『あしたもよかった』(小峰書店)で小学館文学賞、1996年『まねやのオイラ旅ねこ道中』(講談社)で野間児童文芸賞、1999年『パンやのくまちゃん』(あかね書房)でひろすけ童話賞、2009年『ハナと寺子屋のなかまたち 三八塾ものがたり』(理論社)で赤い鳥文学賞を受賞。2014年日本児童文芸家協会より児童文化功労者の表彰を受ける。その他の作品に『だれかさんのかばん』『とんだ、とべた、またとべた!』(以上ポプラ社)「おはなしぽっちり はる・なつ・あき・ふゆ」のシリーズ(小峰書店)『おとうとねずみチロのはなし』『リンちゃんとネネコさん』(以上講談社)などがあり、童話の代表作を収録した「もりやまみやこ童話選」(全5巻・ポプラ社)が2009年に刊行された。

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