
宗谷本線で名寄駅から稚内駅まで向かう。名寄駅を21時すぎに出発して、稚内駅に到着するのは深夜0時近くになる。
日中であれば北海道の景色がたのしめたのだろうけど、残念ながら車内の光が照らす近くの木々しか見えない。名寄の焼鳥屋さんでお酒を飲んだのでウトウトしていると、汽笛を鳴らしながら急ブレーキをかけた。窓際に置いた酔い覚ましのペットボトルのお茶が前方にスススーッと滑っていく。ドスンという衝撃のあとに緊急停車してしまった。
車内アナウンスによると、どうやらシカと衝突してしまったようだ。シカたないよねシカだけに。朝まで電車が動かなかったらどうしよう?と不安になったけど、すぐに運転が再開されてホッとした。
またウトウトとしていると、また汽笛と急ブレーキで緊急停止した。またシカと衝突したようだ。マジかよ。ペットボトルのお茶がまた前方に滑っていく。後ろからは誰かのスーツケースが滑ってきた。シカが衝突しやすい路線で4輪スーツケースは弱いことを知った。1日に2回シカと衝突することもあるし、スーツケースは4輪が便利だよね。シカたないよシカだけに。
「これから先、さらにシカが多いエリアに入りますのでさらに衝突が予想されます」と車内アナウンスが流れた。マジかよ。もっと多くなるのか…。ペットボトルのお茶をカバンにしまった。
運転を再開するも急ブレーキと汽笛をくり返す。名寄で酒を飲むんじゃなかった。アジアの街並みの車のクラクションのように、カジュアルに汽笛が鳴る。完全に車両が止まったかと思えば、攻撃的に汽笛を鳴らしている。きっとシカと睨み合いになっているのだろう。えらい電車に乗ったものだ。
道北で線路が占める面積の割合なんてたかが知れてるのに、なんでシカは線路にいるんだろう。足の細い動物だから、除雪されている線路の方が歩きやすいのかもしれない。もしかしたら迷子にならないように線路を歩いているのかもしれない。
レールを舐めて鉄分を補給しているという話も聞いたことがあるけど、極寒の地で金属を舐めたら舌がくっついてしまいそうなものだ。理由はよくわからんけど、とにかくシカたない。シカだけに。
稚内駅には30分遅れで到着した、シカとは3回衝突した。たったの30分遅れでよく到着できたものだ。宗谷本線の運転士さんはすごい。これが通勤電車だったら勘弁してほしいけど、一人旅なので思い出の一つになる。