
釧路には炉端焼きの店がたくさんある。炉端焼きの店は東京にだってあるけど、釧路がそういう街なのだから、釧路にきたら炉端焼きの気分になる。
炭火で焼いたシシャモとサッポロ赤星の瓶でほろ酔いになって最高の気分で釧路滞在中であることをツイートすると、釧路出身の友人が「ぼくは釧路出身だけど炉端焼きの店に一度も行ったことがないです」と教えてくれた。あぁ、釧路出身の人に釧路の炉端焼きの魅力を伝えたい。
ぼくは日本中のいろんな街を訪れるけど、地元の名物ほど地元の人は食べていない。仙台の人は牛タンを食べないし、小田原の人はかまぼこを食べない。そういうものなのだ。東京の人だってもんじゃ焼きを食べないし、東京ばな奈を見つけない。
ぼくは東京都の立川市出身だ。立川市を紹介するガイドブックにはだいたい、ウド料理がおすすめされている。なぜかといえば立川市は年間約54トンのウドを生産する都内ウド生産のトップランナーなのだ。ちなみに栃木県のウド生産量は年間570トンだ。
立川出身の人は小学生で農家を訪れウドの勉強をする。立川市の義務教育はウド教育だ。だけど、ぼくはウド料理を食べたことがないからおすすめはできない。じゃあ何をおすすめするかといえば餃子か焼肉か焼鳥、それから生ビールだ。そもそも日本中どの街にいっても中華と焼肉と焼鳥と生ビールはだいたい美味しい。
名物ほど地元の人は食べていないけど、名物はその街を訪れたお客さんの思い出話になり、交易品のようにお土産にもなる。東京の人に教えるとけっこう驚かれるけどぼくの経験上、地方への手土産でいちばん喜ばれるのは東京ばな奈だ。
地元の名物は他所の人のためにあるのかもしれない。他所の人ほど他所の街の魅力に気づいているものだったりする。自戒にウドを練り込んで気をつけたい。
釧路の街でぼくが感じる魅力がもう一つある。釧路には古い喫茶店がたくさんあるのだ。アイスコーヒーとパフェを注文して、お店に置かれた古い雑誌や漫画を読みながらのんびりすごしている。旅先で過ごすゆっくりとした時間は、その街にいる感じがしてとても好きなのだ。