
京都の友人たちと中華料理店にいった。関西人は天津飯をよく食べるけど、関東人はあまり天津飯を食べない。関東人の中華料理におけるご飯物ポジションは天津飯ではなく炒飯だ。そもそも関西の天津飯の餡は関東と違うのだ。うどんのダシも東西で違う。天津飯もうどんも関西風のほうがぼくは好きだ。
関西の中華料理店にきたのだから天津飯を注文しようとしたら「ここは冷やし中華が美味しいんですよ」と友人におすすめされる。ぼくは冷やし中華を美味しいと思ったことが一度もない。だけど一度冷やし中華を食べて美味しくないと思ったからそれ以降食べてないだけなので、たまたまファースト冷やし中華がハズレだっただけなのかもしれない。
京都の人が美味しいというのだ。だったら高確率で当たりだろう。セカンド冷やし中華で人生を変えるべくメニューを眺めていたらそもそも冷やし中華がない。もう11月だ。中華を冷やす季節でもない。冷やし中華をはじめれば、終わりがくる。終わりがあるから美しい。
冷やし中華はないけど冷麺はある。盛岡冷麺か?と思ってたらどうやら関西では冷やし中華のことを冷麺と呼ぶそうだ。「冷やし中華って長いから、冷麺のほうが呼びやすいやろ」といわれた。たしかにそうかもしれない。
関東では冷やし中華のことを略して冷中(ひやちゅう)と呼ぶ。生ビール中ジョッキを生中と略すのとまったくおなじ理屈だ。「京都だと冷中っていわないの?」と聞くと「そんなんいわないどす〜」と笑われた。“どす〜”の部分はくやしかったので作った話だ。冷中のことはしっかり笑われた。
冷麺やら天津飯やらエビチリやら酢豚やらいろいろ注文してみんなでシェアすることにして食べたんだけど、たしかにこのお店の冷麺は美味しかった。セカンド冷やし中華というよりはファースト冷麺に満足した。
数日後、関東の友人とご飯を食べているときに、関西では冷やし中華のことを冷麺と呼ぶことを話した。やはりみんな驚いていた。その流れで東京だと冷中って略すじゃん?みたいなことをいったらその場にいた全員からいわないよとつっこまれた。変なこと広めるなといわれた。あれ、そうだっけ、いわないのか。
京都の友人たちに「東京だと冷中だよ」って自信もって教えちゃったよ。冷やし中華って冷中っていわなかったかな、だけどもう冷中でいいじゃん。