作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.135読み聞かせボランティア

障害のある子どもたちにも絵本や童話を読み聞かせてあげたいので、あなたの作品をテープに吹きこみたいとか、手がきの大型絵本や紙芝居にしたいとか、更には点字にして貸し出し本にしたいとかいうので、その許諾願いが図書館やボランティア団体から送られてくることが少なくありません。

もちろん、無料であっても、ボランティアの善意を信じて、快く受諾の返事を出してきましたが、ただの一度もお礼のはがきはもとより、許諾書を受けとったという返事さえもらったことがありません。
これにはいささかカチンときます。どんなことでも相手にお願いをして承知してもらえば、その返事を出すのが最小限のエチケットでしょう。それとも、お前の本を利用してあげるのだからありがたく思え、私たちは社会奉仕のりっぱな仕事をしているのだから、申し入れを受諾するのが当たり前、とでも思っているのでしょうか。
そういう心ない人に自分の本を読み聞かせしてもらってもうれしくありません。

そもそも読み聞かせというのは子どもに読書の楽しさをわからせてあげたいと願う愛情から出発するものであって、ボランティア活動を行うための手近な手段ではないのです。
ろくすっぽ本を読んだこともなく、子どもに関心があるわけでもなく、読み聞かせなら自分にもできるという安易な考えで「読み聞かせ=ボランティア」と思いこむのは、いらなくなった古着を被災地に送って満足している人と同じです。

本当に読み聞かせをしてあげたいと思うならみずから本好きになり、絵本や童話の魅力を存分に理解できることが先決でしょう。あえていうなら、自分が読んで心を動かされた絵本や童話のすばらしさをいきいきと伝えられる人間味豊かな大人になることだと思います。すぐれた絵本や童話は子どもばかりか大人までも感動させずにはおきません。その感動をどうやって子どもたちに伝えてあげるかを真剣に考える読み聞かせでありたいものです。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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