第3回ポプラズッコケ文学新人賞 結果発表

第3回ポプラズッコケ文学新人賞 結果発表

「第3回ポプラズッコケ文学新人賞」にご応募くださった皆さま、どうもありがとうございました。今回は、総数189編のご応募をいただきました。
 10人の選考委員で全作品を読ませていただき、議論をたたかわせた結果、2次選考に8作品が残りました。最終選考に進める作品を決める選考会では、1作に票が集中し、ほかの7作品はどの作品も、受賞後すぐデビューしていただくにはまだ力が足りないと思われる面がありました。
 よって、1作品のみで審査委員長の那須正幹先生、弊社社長を交えた最終選考を行い、星はいりさんの「焼き上がり5分前!」を大賞に決定いたしました。
 小学5年生の3人が、パン屋の手伝いからパンに興味を持ち、創作パン大賞を目指してさまざまな工夫を重ねていく物語。ものづくりの楽しさを素直に描き、ワクワクさせてくれる作品です。文章もこなれており、構成も丁寧なので、これからの活躍を大いに期待して、デビューしていただきたいと思います。
 さて、今回の全体の傾向ですが、前回多かった時代ものを扱った作品は、今回はぐんと減りました。代わりに、第2回受賞作からの流れもあるのか、仲間といっしょに何かすることを描いた作品が増えました。とくに3人組の登場が頻繁に見られました。大賞作品も、男の子2人、女の子1人の3人がチームを組みます。本賞の冠でもある「ズッコケ三人組」が継承されていると思うと嬉しいのですが、人物それぞれの個性がまだおざなりになっている作品が多いのは残念です。キャラクターの一人一人に愛情を込めて、丁寧に描くことから、物語の魅力は生まれてくるのではないでしょうか。読者が求める素敵な友だちが登場する作品には、ほとんど出会えませんでした。典型的になりすぎず、うすっぺらでない、魅力的なキャラクターたちの出現を、心待ちにしております。
 第2回の大賞作品「ノブナガ、境川を越える──ロボカップサッカーの陣」(奈雅月ありすさん)は、改稿してさらにパワーアップし、本年3月に『おれたち戦国ロボサッカー部!』として刊行されました。佳作の「姫隠町でつかまって」(二枚矢コウさん)も、ポプラカラフル文庫から『見習い!?神社ガールななみ 姫隠町でつかまって』として6月に刊行されています。お二人とも、すでに2作目の執筆も進んでおります。ポプラズッコケ文学賞から生まれた「お願い!フェアリー」(みずのまいさん)も、大人気シリーズに成長しました。活躍中のズッコケ賞出身作家に続くみなさんの力作を、第4回に向けて改めて募集いたします。編集部をうならせる、フレッシュな力作のご応募を、心よりお待ちしております!

大賞
副賞:100万円
星はいりさん
『焼き上がり5分前!』

受賞のことば
大賞 星はいりさん
この度は、大賞をいただきありがとうございました。お陰さまで夢が叶いました。ズッコケ三人組シリーズを読んでいる、子どもの時の自分のところへ行って教えてあげたいです。
さて、その子ども時代が終わり、いつしか自分自身でお話を書きたいと思った時、私が書きたいと思ったのは、やっぱり、ズッコケシリーズみたいに、思いっ切りワクワクさせてくれるお話でした。
自分がこれまで、たくさんの本から受け取って来た、ワクワク、キラキラした気持ちを今度は自分がお話に込めたい、そう思って今回の作品を書きました。
このお話には、三人の主人公が出てきますが、彼らは善し悪しなんかにとらわれず、思い切りやりたい事をやっています。その姿は、きっと、読んで下さる方にワクワクを届けられるんじゃないかと思っています。
この先もお話を書くとしましたら、今まで自分がお話たちからいただいた、あの楽しい気持ちが詰まったものを書きたいと思っています。
そうする事で、かつて自分が受け取った、ワクワク、キラキラした気持ちに手を振りたいな、と思っています。

星はいり

● 選考経過 ●

応募総数189編。
10名の編集者で分担し、1次選考。判断に迷う作品については2名以上の編集者が読んでいます。
その結果、以下の8編が2次選考に残りました。

タイトル名 著者名
最終選考に残った作品
魔法少女つばき 杜丘みやぎ  
正義のミカタ 泉田もと  
焼き上がり5分前! 星はいり
理科室の秘密 畠山真佐子  
Qの時間です 九段まもる  
トカゲ・ボーイズ すみのり  
お昼寝時の課外授業 相羽優作  
まゆ12さい 浪花の魔法学校へ行く 大枝良子  

※応募受付順、敬称略

2次選考では、10名の編集者が8編の作品すべてを読んだ上で議論を戦わせ、1編のみを最終選考に残すこととなりました。
最終選考は、選考委員長の那須正幹先生と、弊社社長、及び10名の編集者で行いました。

● 選 評 ●

大賞「焼き上がり5分前!」 星はいりさん
 今回は、応募作品が低調で、最終候補に残ったのは、一編というさみしいものだったが、逆に言えばそれだけ他を凌駕するだけの魅力を持っていたということだろう。
 最終候補は『焼き上がり5分前』という、ちょっと変わったタイトルの作品で、内容はと言えば、小学6年生の子ども達が、創作パンコンクールに応募して、百万円の賞金を獲得しようと、奮闘努力するという物語である。
 主人公たちは、本田めぐると、酒屋の北田聡と、双子の姉であるあかりの三人だ。
 三人はひょんなことからめぐるの祖父が一人でやっているパン屋でアルバイトを始めるのだが、製粉会社の主催する創作パンのコンクールを知り、自分たちでオリジナルなアンパンを考案して、応募することにした。折もおり、祖父がぎっくり腰の手術をするために入院。あわや休業かと思っていたところに、めぐるの叔父という男が現れ、店を続けることができるようになる。かくして三人は店を手伝いながらも、自分たちで考案した、むかしながらの酒麹を使ったアンパンを焼き上げコンクールに出品。みごと彼らの「酒種餡パン・天の川」が大賞に選ばれるのだが……。
 一般に物づくりの物語というのは、作り手も読み手も大いに興味を掻き立てられる題材ではある。昨年の大賞作品も、ロボット製作の話だったが、今回の作品も、アンパンづくりという、一風変わった素材をうまく作品化していた。文章も読みやすく、三人が苦労しながら昔ながらの味に挑戦するプロセスも、思わずハラハラドキドキしながら読ませてもらった。また結末の付け方も、それなりにカタルシスがあった。
 欲を言えば、三人のキャラクターをもっとくっきりさせ、アルバイトにしても、パン作りにしても、それぞれの反応のちがいなどをきわだたせてみてはどうだろう。あるいは、叔父がなぜタイミングよく実家に戻ってきたのか。それなりの理由があれば(たとえば父親の体調不良の噂を聞き、心配になって帰ってきたとか)読者も納得するのではないか。
 ともあれ、一気に読ませる作品であったことはたしかで、この作者は、かなり文章修業をされた方ではないかと思う。
 大賞受賞は、主人公たち同様、作者の努力のたまものだろう。これを機に、次作、三作と挑戦されることを願っている。
(選考委員長 那須正幹)

2次に残った作品について、編集部の寸評を掲載させていただきます。

「魔法少女つばき」 杜丘みやぎ
自分の命と引き換えに少年に助けられた妖狐つばきが、恩人の生まれ変わりを探すためにローカル局番組のヒロイン「魔法少女つばき」を演じる。テンポよくわかりやすいストーリーで読ませるが、生まれ変わりがすぐに見つかり、展開も読めやすく、物語の満足感がうすい。キャラクター(とくに生まれ変わりの航平)の魅力も足りない。書きたい世界をもっていることは伝わってくるので、構想の熟成を。

「正義のミカタ」 泉田もと
夢に現れた先祖の指示で、先祖の部下の子孫を探し出さなければならなくなった三方。学校の生徒会では「トラブル相談委員会」の委員長を命じられ……。会話やユーモアのセンスがあり、文章もうまいので読ませる。が、探し出す子孫の4人が同じ学校内にいてすぐに見つかるというのは安易では? 4人にちなむ各エピソードにとってつけた感があり、展開上こなしていくだけの印象を受けてしまうので、子孫探しをからめず、トラブル相談委員会のストーリーだけでよかったかもしれない。また、すべてが前世の導きというラストは残念に思った。

「理科室の秘密」 畠山真佐子
理科の先生であるパパと美加は、同じ小学校に通うことになったが、親子であることは隠している。その学校の理科室にはオバケが出るといううわさがあり、次々と先生が辞めている……。理科を題材にしたミステリーということで、設定に期待の大きかった作品だが、トリックが浅く、無理があるため全体の説得力が感じられない話になってしまっていた。また、小学生が液体窒素や真空装置を使ってトリックを仕掛けられるか、理科のレベルと、話のレベルがかみ合っていない。とぼけたお父さんのキャラクターは好感だった。科学ミステリーにはぜひまた挑戦してほしい。

「Qの時間です」 九段まもる
いつもニコニコしているキー坊のまわりで、ダンスマン、マミーさんなどの奇妙な存在の目撃談が増え始めて……学校に「Qの時間」がやってくる!? どこか不気味、不思議なリズムと雰囲気にあおられ、いったい「Qの時間」とは何なのか気になってつい読み進めてしまう作品。が、いざそれが始まると、期待に十分こたえられず、消化不良に終わってしまう感がある。素材の魅力は大きいが、完成度の低さが残念。ただこの独特さに可能性を感じる作品。

「トカゲ・ボーイズ」 すみのり
友人二人と、ターゲットを決めてこっそり攻撃をする「ハンターゲーム」をしていたトモヤは、トカゲをしかけたゲームで仲間を裏切ることになり、ひとりぼっちに。気がつくと自分がトカゲになっていて……。前半のリアリズムと、急に主人公がトカゲになる後半のトーンのギャップ感はぬぐえず、すっきりしない。トカゲになってからの冒険が生き生き書けているが、本来のテーマとは別。前半のいじめの問題は、やはり人間の姿で、自分で解決しなければならないこと。変身を経てなんとなく解決してしまっている点を再考されたい。

「お昼寝時の課外授業」 相羽優作
友人が公園で飼っていた「野良犬」が「誘拐された」というので、仕方なく探すのに協力する直樹は、クールで頭脳明晰な主人公。野良犬を連れて帰ったというK子も交え、最近ほかにも犬がいなくなっているという事件を追っていく。事件発生から謎解きまでテンポよくこの枚数でまとめる力がある。が、淡々として全体の面白みに欠けるところや、描かれている事件への不快感などが指摘された。

「まゆ12さい 浪花の魔法学校へ行く」 大枝良子
魔法使いの血をひくまゆが、夏休みに大阪の魔法学校へ修行に行く。そこにはたこやきを魔法で焼く校長がいたり、卑弥呼や安倍晴明が講師だったりのむちゃくちゃぶり。明るく、ビジュアルイメージがわき、健やかさを感じさせる作品。魔法学校のなにわっぷりが見どころの一つになるが、表面的で物足りないのが残念。世界を楽しむためには、魔法や人物にもオリジナリティや、魔法なりのリアリティがほしい。

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