▲『ぱかっ』を読んでいるママと赤ちゃん。ご機嫌です♪
本をひらくと、ころんとしたたまごの絵。
「たまごさん たまごさん」と呼びかけてページをめくると…
「ぱかっ」! たまごの中からかわいいヒヨコがとびだしました。
今度はわにに向かって「わにさん わにさん」!
すると… 大きな口が「ぱかっ」とあきます。
なんてシンプル! でもこれがクセになっちゃうんです。
「ぱかっ」という言葉の響きのよさと、何かがひらく爽快感。そしてその後に絵が変わる驚きが、赤ちゃんの心を掴んではなしません。その証拠に、読めば思わずニッコリ笑顔。
▲赤ちゃん絵本『ぱかっ』
赤ちゃん絵本『ぱかっ』には事前アンケートでこんなコメントが寄せられました。
「ぱかっ」というと、うちの子が「にこっ」となるので私までうれしくて「にこっ」となっちゃいました!
(ママ・男の子10ヶ月)
今回は赤ちゃんもママもにっこり笑顔にする1冊、『ぱかっ』の制作秘話を作者の森あさ子さんにうかがいます!
▲作者の森あさ子さん
森さんが初めて出版社にラフを送ったのは3年ほど前。今とはまったく違う内容だったそうです。そこから1歩1歩改稿を重ねて行く中で、「ぱかっ」という音とともに何かがでてくるというあらたなアイディアにたどり着いたそう。
----すごくいいアイディアですよね! 思いついたきっかけはなんですか?
森さん---音の響きが面白いものでなにか描きたいと考えていたのですが、ある時ふと眺めていた木に実がなっていたんですね。この実が落ちてぱかっと割れたら…と思ったのがきっかけでした。果物がぱかっと割れるイメージからスタートしたので、初期のラフではりんごがぱかっとひらくところから始まっています。でももっといろんなものがひらいていっても面白いかなと。どんなものがひらいていったらおもしろいか、イメージをふくらませながら作りました。
----この本では、たまごやワニの他に、ちょっと意外なものも「ぱかっ」となるのが面白いですね! この内容はすぐに決まったのですか?
森さん---そこにはかなり時間をかけました。編集者の方々といろんな「ぱかっ」をかんがえました。いまの3倍~4倍の量だと思います。
---そんなにたくさん! たとえばどのようなものがありますか?
森さん---最初の段階では、マトリョーシカも登場する予定だったんです。しばらくマトリョーシカで進めていたのですが、言葉の響きがこの本にはしっくりはまらなくて…。子どもたちにとってあまり身近ではないのではという声もあったので、よりなじみがあるダルマにしました。
こうして選りすぐりの「ぱかっ」を集めた後は、一般のママに協力を要請! ラフを赤ちゃんに読み聞かせしてもらい、その感想をアンケートに記入してもらったのだとか。
----赤ちゃんにきちんと届くものにするための一工夫があったのですね。その結果はいかがでしたか?
編集---高評価だったのですが、1箇所だけ、どの赤ちゃんに読んでもきょとんとしてしまうページが見つかりました。本描きになる前でしたので、森さんにご相談して別のものに変えていただきました。赤ちゃんに向けて絵本を作る難しさを痛感しました。
こうしてひとつひとつ積み上げながら作成した原画を、今回特別に見せていただきました!
----とってもカラフルで、温かみがあります! どういった手法で描かれているのですか?
▲『ぱかっ』の原画。とっても鮮やか!
森さん---自分で一枚一枚ぬった紙を、切って貼っています。
下描きは、したりしなかったり。ぶっつけ本番のものも多いです。
---そうなんですね! 下描きをする場合としない場合があるのはなぜですか?
森さん---あまり下描きをしてしまうと、その線に引っ張られて、切り味が面白くでなくて…。アタリ程度に下描きもするのですが、その通りに切れたことはほとんどないです(笑)何枚も切って、いいのをピックアップする場合もあります。『ぱかっ』の目や鼻などの顔のパーツは下描きなしで切っています。
----おしゃれでありながら温かみがあるのは、そういった制作方法からきているのですね!
そんな森さんの絵は絵本にぴったりだなと思いましたが、絵本を制作されようと思ったきっかけはなんですか?
森さん---小さい頃から絵本は好きで、実は中学生の頃、絵本部に入っていたんです(笑)いつか絵本をかけるといいなとぼんやりと思っていました。ただ、大学を卒業して就職するころには、そこからは離れていたんです。イラストやデザインの仕事をしていたのですが、イラストレーション誌(玄光社)のThe Choiceで入選したときに、大賞展があって。そこで岩崎書店の編集者さんにお声をかけていただいて、『あなのなか』(岩崎書店)という作品を作ったのがきっかけです。一冊の本にかける編集者さんの熱い思いや、絵本制作の奥深さに魅了されました。
----『あなのなか』も赤ちゃん絵本ですよね! 森さんは1才の娘さんをお持ちだとか。赤ちゃん絵本はよく読まれるのでしょうか?
森さん----はい。一緒に絵本を読んでいて、食べ物がでてくると自分もその絵をつまんで食べているフリをします。登場人物がお散歩していたり歩いているシーンを読んでいると「バイバーイ」と手をふりったりしますね。
----今回の『ぱかっ』の娘さんの反応はいかがでしたか?
森さん---「ぱかっ」のタイミングで、こちらを見ながら口を大きく開けていました。娘なりに楽しんでいるみたいです(笑)
----この作品は、森さんと同じように子育て真っ最中の親御さんと、その子どもたちに向けた作品かと思います。最後に、『ぱかっ』をこれから読もうかなと思っている方に向けて、メッセージをお願いします!
森さん---対象年齢は0・1・2才ではあるんですが、年齢を問わずいろんな方に読んでもらえたらうれしいです。感覚的に楽しめる絵本だと思うので、赤ちゃんとママのコミュニケーションツールになってくれたら、それがいちばんですよね! 親子で一緒に楽しんでほしいです!
----森さん、ありがとうございました!
- 森あさこ (モリアサコ)
- 1975年生まれ。女子美術大学卒業。
映像美術デザイナーを経て2005年よりイラストレーター・グラフィックデザイナーとして活動。ほかの作品に『あなのなか』(岩崎書店)がある。
子ども向けワークショップなども開催している。一児の母。
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