ポプラ社 百年文庫

名短篇の本棚です

全巻ラインナップ

幽
84
幽

ワイルド『カンタヴィルの幽霊』
サキ『ガブリエル・アーネスト』
ウォルポール『ラント夫人』


Illustration(c)Sumako Yasui

怖がらないでいい
さあ、泊まっておいで!

ロンドン郊外の「幽霊屋敷」に合理主義の権化のようなアメリカ公使の一家が入居した。「輝かしい閲歴」をもつ幽霊は家人を怖がらせようと必死になるが…(ワイルド『カンタヴィルの幽霊』)。領地に出没する「裸の少年」の戦慄すべき正体(サキ『ガブリエル・アーネスト』)。怒りにまかせ悪口雑言を浴びせかけるかと思えば、うろたえ「泊まっていってくれ」と哀願する屋敷の主人。不気味さをこらえ「客」となった男が語る、恐るべき物語(ウォルポール『ラント夫人』)。超現実の闇とユーモア、奇々怪々の三篇。

著者紹介

ワイルド Oscar Wilde 1854-1900
イギリスの詩人、小説家、劇作家。アイルランドのダブリンに生まれ、オックスフォード大学在学中より詩作を始める。派手な服装や言動で注目を浴びるが、男色罪による獄中生活後は不遇な晩年を送った。代表作に小説『ドリアン・グレイの肖像』、戯曲『ウィンダミア夫人の扇』『サロメ』など。

サキ Saki 1870-1916
イギリスの作家。本名はヘクター・ヒュー・マンロー。父の赴任先のビルマ(現・ミャンマー)に生まれ、警察官、海外特派員生活を経て作家に。オー・ヘンリと並ぶ短篇小説の名手として評価されたが、第一次世界大戦で戦死。代表作に『ガブリエル・アーネスト』『あけたままの窓』ほか。

ウォルポール Sir Hugh Walpole 1884-1941
イギリスの作家。ニュージーランドに生まれる。ケンブリッジ大学を卒業後、教師の傍ら執筆を開始。おもな作品に『ジェレミー』『銀の仮面』『ヘリーズ年代記』などがある。

編集者より

いるのか、いないのか。――幽霊は見るべきものによってその姿を変えるもの。ロンドン郊外に住む「合理主義」の申し子のようなアメリカ公使の家族。唯一、幽霊の言葉を信じた娘のヴァージニアだけが、幽霊から「合理主義」を超えた「愛」の本質を教えてもらう『カンタヴィルの幽霊』など、ユーモラスでありながらもどこかロマンチックな味わいのある作品が揃っています。ワイルド、サキ、ウォルポール。三人のイギリスの作家が綴る、上質な恐怖をお楽しみください。(Y)