ポプラ社 百年文庫

名短篇の本棚です

全巻ラインナップ

都
50
都

ギッシング『くすり指』
H・S・ホワイトヘッド『お茶の葉』
ウォートン『ローマ熱』


Illustration(c)Sumako Yasui

あの街で出会った…
旅の空に輝く恋がある

伯父とローマに滞在するケリン嬢は、朝食のテーブルで知り合ったイギリス人青年に惹かれていく…「永遠の都」で願った恋の行方(ギッシング『くすり指』)。長年節約を重ね、ついにヨーロッパ旅行を実現した教師ミス・アビー。ロンドンで買った土産のネックレスが幸福を呼び込んで…(H・S・ホワイトヘッド『お茶の葉』)。連れ立って旅に出た旧知の夫人ふたりが、古都のテラスで秘められた過去を露にする(イーデス・ウォートン『ローマ熱』)。旅先の都で繰り広げられる恋と人生の物語。

著者紹介

ギッシング George Gissing 1857-1903
イギリスの小説家。若いころから挫折と貧困に苦しみ、初期は下層階級の生活をリアルに描いたが、1890年代に名声を確立してからは、すぐれた短篇を数多く発表した。代表作に『三文文士』『ヘンリー・ライクロフトの私記』など。

H・S・ホワイトヘッド H.S.Whitehead 1882-1932
アメリカの怪奇小説作家。本来は聖職者で、怪奇小説専門誌の創刊をきっかけに、1924年ごろから怪奇小説を書きはじめる。宣教のため一時西インド諸島に移住、現地の信仰に題材を得た作品も多い。代表作に『ジャンビー』『黒い恐怖』など。

ウォートン Edith Wharton 1862-1937
アメリカの女性作家。裕福な家庭に育ち、子供時代には両親とヨーロッパに滞在することも多かった。十代から小説を書きはじめ、1921年には女性初のピューリッツァー賞を受賞。代表作に『エイジ・オブ・イノセンス』など。

編集者より

華やかさと歴史と、憧れ――。「都」の三篇は、女性たちの恋を中心とした物語です。いずれも登場人物の心理が細やかに描かれて秀逸ですが、中でも惹かれるのはホワイトヘッドの『お茶の葉』に登場するミス・アビー。堅実さを絵に描いたようなオールドミスの教師が、コツコツと貯めた資金でついに憧れのヨーロッパ旅行へ。少女のような好奇心と、おそらく時には周囲を辟易とさせる頑なさが、予想しえなかった夢のようなドラマを生み出します。エスプリの効いた三作、ぜひご一読ください。(S)