ポプラ社 百年文庫

名短篇の本棚です

全巻ラインナップ

波
48
波

菊池寛『俊寛』
八木義徳『劉廣福』
シェンキェヴィチ『燈台守』


Illustration(c)Sumako Yasui

襲いかかる運命…
乗りこえられるのか?

謀叛に失敗し島に流された男が、絶望のなかに新たな人生の境地を見出していく菊池寛の『俊寛』。巨大な体躯に釣り合わぬ童顔、工場に新たに雇われた男はうまくしゃべることもできなかったが…。忍耐と誠実でついに絶大な信頼を勝ちとっていく男の物語(八木義徳『劉廣福』)。異国で燈台守となった老人は四百段以上もあるらせん階段を上り下りする孤独な仕事に精励するが…。一瞬の油断がまねいた悲劇(シェンキェヴィチ『燈台守』)。運命の波に襲われた人間たちの生き方。

著者紹介

菊池寛 きくち・かん 1888-1948
香川県生まれ。京都帝国大学在学中から作品を発表し、1918年『無名作家の日記』で文壇の地位を確立。「文藝春秋」を創刊して作家育成にも貢献した。芥川賞、直木賞の創設者としても知られる。代表作に『恩讐の彼方に』『真珠夫人』など。

八木義徳 やぎ・よしのり 1911-1999
北海道・室蘭生まれ。早稲田大学在学中から横光利一に師事。満州での生活を題材にした『劉廣福』で、1944年に芥川賞を受賞。創作への真摯さで「最後の文士」とも呼ばれた。他の作品に『母子鎮魂』『私のソーニャ』『風祭』など。

シェンキェヴィチ Henryk Sienkiewicz 1846-1916
ポーランドの小説家。23歳から週刊誌や新聞で小説を発表し始め、1895年、皇帝ネロ統治下のローマを描いた『クオ・ヴァディス』で世界的に名を馳せる。1905年にノーベル文学賞を受賞。代表作に『大洪水』『遠雷』など。

編集者より

逆境においやられながらも、生きることをあきらめない人々の姿に勇気をもらえます。特に、困難な出来事に柔軟に対処し、自らの道をきり拓いていく『劉廣福』のひたむきな姿には熱い気持ちが湧いてきます。今このような時代だからこそ、読んで得るべきものがあるのではないかと思います。仕事で疲れている人におすすめしたい巻です。(Y)