ポプラ社 百年文庫

名短篇の本棚です

全巻ラインナップ

窓
26
窓

遠藤周作『シラノ・ド・ベルジュラック』
ピランデルロ『よその家のあかり』ほか
神西 清『恢復期』


Illustration(c)Sumako Yasui

ちいさな窓から
遥かな人生がみえる

冬枯れたリヨンの町を一望できるアパートに、ひとりの老学者が暮らしていた。その生活は驚くほど規則正しく、紳士然として見えたが…。静かな雪景色を背に突如、浮かびあがる人生の哀しみ(遠藤周作『シラノ・ド・ベルジュラック』)。天涯孤独の青年が隣家の窓にはじめて温かい「他者」を見出していくピランデルロの『よその家のあかり』(ほか一篇)。療養する少女の変化をみずみずしい生命感覚で描いた神西清の『恢復期』。沈黙に秘められた思いが室内楽のように響きあう。

著者紹介

遠藤周作 えんどう・しゅうさく 1923-1996
東京・巣鴨生まれ。フランスに留学してカトリック文学を研究。帰国後に小説を書き始め、1955年に芥川賞を受賞。カトリック作家として日本人と神の問題を追求、またユーモラスなエッセイでも人気を得た。代表作に『海と毒薬』『沈黙』『深い河』など。

ピランデルロ Luigi Pirandello 1867-1936
イタリアの小説家、劇作家。早くから詩や小説に才能を発揮したが、次第に戯曲に力を入れ、20世紀演劇の革新者となり、1934年にノーベル文学賞を受賞。代表作に『故マッティーア・パスカル』(小説)『作者を探す六人の登場人物』(戯曲)など。

神西清 じんざい・きよし 1903-1957
東京・牛込生まれ。学生時代に堀辰雄らと同人誌を創刊。すぐれた作家だったが、それ以上にフランス文学、ロシア文学の名翻訳者として広く知られている。主な著作に『灰色の眼の女』『少年』、翻訳作にチェーホフ『かもめ』ほか多数。

編集者より

単館ロードショーの抜群に美しいヨーロッパ映画のような……そんな本を読みたいときは、この巻がオススメ。異国の窓から見下ろす雪のちらつく街、暗い部屋から隣家の明かりをみつめる青年の目、恢復期にある少女の心と窓外の景色。ことにイタリアの作家ピランデルロの作品は、「こんな作家がいたのか」と惚れ込む人もいるに違いない。味わい深く、美しく、そしてちょっとビターな文学世界。(N)