ポプラ社 百年文庫

名短篇の本棚です

全巻ラインナップ

絆
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絆

海音寺潮五郎『善助と万助』
コナン・ドイル『五十年後』
山本周五郎『山椿』


Illustration(c)Sumako Yasui

信じて待つ人がいる
胸が熱くなる心の物語

「いやじゃ! おれは一生やつに口をきかぬと決心したのじゃ」――。極端に性格の違う二人の家老が引き起こす珍騒動。競い合いながら老年を迎えた男たちの人生に決着はつくのか?(海音寺潮五郎『善助と万助』)。職を求め、恋人を残して海を渡った男の運命の物語『五十年後』(コナン・ドイル)。才能に恵まれつつも僻みを捨てきれず堕落していく孤独な男の再起をえがいた『山椿』(山本周五郎)。いずれも膝を叩きたくなるラストシーン、人を信じる忍耐力と希望を伝える名篇。

著者紹介

海音寺潮五郎 かいおんじ・ちょうごろう 1901-1977
鹿児島県生まれ。本名末富東作。大学を卒業して教職についた後、海音寺潮五郎の筆名で応募した懸賞小説に当選。1936年に直木賞を受賞した。雄渾にして詩情あふれる歴史小説で人気を博す。代表作に『天と地と』『武将列伝』『西郷隆盛』。

コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 1859-1930
英国スコットランドのエディンバラ出身。医学部を出て開業医になったものの患者が少なく、暇な時間を利用して小説を書いていた。名探偵「シャーロック・ホームズ」の生みの親で、推理小説というジャンルを確立した作家と評されている。

山本周五郎 やまもと・しゅうごろう 1903-1967
山梨県生まれ。本名清水三十六(さとむ)。小学校卒業後、質店の徒弟や新聞記者等の職を経て作家に。1943年には直木賞に推挙されたものの、文学は賞のために存在するのではないと受賞を辞退。終生庶民の暮らしを見つめ続けた作家だった。代表作に『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』。

編集者より

道で偶然だれかに出会ったり、思いがけず人と人の縁がつながったり……人生は見えない力で動かされているのでは? と思ったことはありませんか。『絆』の巻には、人の思いが、時間を超えて伝わる奇跡を描いた作品を収録しています。シャーロック・ホームズシリーズにおいてもしばしば男同士の熱い友情を描いているコナン・ドイルですが、『五十年後』のようなロマンチックな作品もあったのか! と、この作品に出会ったこと、それ自体が嬉しくなる一篇。海音寺潮五郎と山本周五郎は、ともに長く大衆に愛され続けている作家ですが、この組み合わせで読むことにもある種の「絆」を感じました。信じて思い続けることの難しさとすばらしさ――友だち、親子、恋人など大切な人にプレゼントして感想を聞いてみたい1冊です。(R)