ポプラ社 百年文庫

名短篇の本棚です

全巻ラインナップ

森
18
森

モンゴメリー『ロイド老嬢』
ジョルジュ・サンド『花のささやき』
タゴール『カブリワラ』


Illustration(c)Sumako Yasui

きらきらした目
森の奥に優しさがあった

森が朝の美しい光に染まり始めると老嬢はつぶやく。「新しい日なんか、大きらいだ」――。近隣から「けちな金持ち」と誤解されながらもプライドが高く助けを求められない女性が、ついに心開くまでを描いたモンゴメリーの『ロイド老嬢』。子どもの澄み切った眼差しと自然の神秘が織りなすメルヒェン『花のささやき』(ジョルジュ・サンド)。果物売りの大男と小さな女の子の心の交流を美しくつづった『カブリワラ』(タゴール)。人生の厳しい現実も、詩心と優しさで包みこむ感動の三篇。

著者紹介

モンゴメリー L.M.Montgomery 1874-1942
カナダの作家。プリンス・エドワード島生まれ。2歳になる前に母と死別、母方の祖父母に育てられた。祖母の郵便業務を手伝いながら書いた『赤毛のアン』(1908)が世界的なベストセラーとなる。「アン・シリーズ」は7作まで書き継がれた。

ジョルジュ・サンド George Sand 1804-1876
フランスの作家。地方の貴族と結婚し、2子をもうけるが平凡な夫に飽きたらず、パリへ出て作家となる。社交界では「男装の麗人」として知られミュッセやショパンらとの華麗な恋愛遍歴は有名。素朴な田園生活を題材にした『愛の妖精』はサンドの最高傑作とされる。

タゴール Rabindranath Tagore 1861-1941
インドの詩人、作家、思想家、教育家。ベンガル地方の名家に生まれる。幼少から詩を書き、10代半ばで詩集を出版。1912年、ベンガル語で書いた宗教詩を自ら英訳した『ギタンジャリ』を刊行、翌年、アジア人として初のノーベル文学賞を受賞。

編集者より

喫茶店でモンゴメリの『ロイド老嬢』を最初に読んだ日のこと、いまもはっきり思い出す。胸の奥にある泉のようなもの、忘れていた泉が突然ひらいて、清らかな水が溢れ出すような瞬間だった。ジョルジュ・サンドの『花のささやき』は小さな作品だが、自然の言葉に耳を傾ける喜びの深さに気づかされる。タゴールの『カブリワラ』も、生き生きとした心が飛び跳ねている。森に分け入って清々しい香りに心がよみがえるような読後感だ。(N)