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   1 とつぜんのファックス

 今日は、さえない土曜日だった。
 あけぼの小学校の四年生が全員参加の、ドッジボール大会があったから、紫月北斗はしぶしぶ参加した。ドッジボールは大きらいだ。
 やせっぽちで運動オンチの北斗は、まっさきにねらわれて、まっさきにアウトになる。第三試合では、左ほほにボールをぶつけられ、メガネがふっとび、ツルがゆがんだ。
「レンズがわれちゃうとこだったよ」
 ずりおちてきたメガネを、北斗はおしあげた。左のほっぺたは、まだヒリヒリいたい。
 見あげた空は、赤くそまりはじめていた。
 もうすぐ十一月。日ぐれが急に早くなった。
「あーあ、もう四時か」
 あけぼの商店街のアーケードの時計を見て、北斗はためいきをついた。
 今日は、ほんとうは、上野駅へ行きたかった。
 アメリカの大学で、ロボットの研究をしているおとうさんが、きのう、最新鋭のデジタルカメラを送ってきてくれたのだ。特急列車の写真を、たくさんとりたかった。
 鉄道のことなら、北斗は、どんな小学生にもまけないと思っていた。
 日本全国の鉄道路線は、ぜんぶ頭に入っている。特急列車の名前だって形式だって、そらでいえる。
 けれども、昼休みに教室でひとり、時刻表を見ていると、クラスの女子に「いやあね、北斗くんってネクラ」といわれるのだ。
 商店街の先は、大きなおやしきばかりの住宅街だ。
 このあたりから、あけぼの小学校へ通うこどもは、ほとんどいない。
 北斗は、サザンカのかきねにかこわれた、りっぱなおやしきの門をくぐった。
 サッカーの試合ができるくらい、広い庭。
 庭のまんなかにたつ、大きな白い洋館。
 門からげんかんまで、何十メートルも玉じゃりの小道がつづいている。
 げんかんのインターホンをおすと、すぐにドアがすっとあき、黒スーツにちょうネクタイのひょろっとした老人が、北斗にうやうやしく頭をさげた。執事の十兵衛じいだ。
(続)