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ポプラ社創業60周年特別企画 諸国物語

1

『かけ』

チェーホフ/原卓也 訳

十五年、「囚われの身」になるという実験
その時、彼の心に何が起きたか?

十五年の幽閉生活に耐えたら、二百万ルーブル。酒席で公論となり、若い法学者は尊大な資産家の提案を受けて立つ。庭の離れに閉じこもり、一年、六年、十年・・・・・・。一夜の酔狂が人生を台無しにしたかと思われたが、すべてを覆す驚きの結末が待っていた! 最後に人の心を満たすものは何か。


2

『秘密のないスフィンクス』

ワイルド/平井程一 訳

それでも人は秘密を求める
謎の女に恋した男の青ざめた告白

馬車から顔をのぞかせた見知らぬ女性に心奪われたマーチソン卿は、晩餐会で偶然、彼女と再開する。月光のような妖しい魅力に恋心を募らせるが、女の唐突で不可解な行動にすっかり振りまわされてしまう。憔悴しきった彼の話を聞いた友人はその謎を鮮やかに解いてみせる。


3

『盲目のジェロニモとその兄』

シュニッツラー/山本有三 訳

なぜ? なぜ疑う?
兄弟の心が本当に結びつくまで

弟を失明させた罪の意識に苦しむ兄は、自分の楽しみを捨て、放浪する弟に寄り添い続ける。だが、ある日、弟が兄を突然なじりはじめた。目が見えないゆえに生じた誤解。心が離れていく哀しみ。真実を伝えようとする兄は思い余って常軌を逸した行動に出る。沈黙のなかに心つながる瞬間を描く。


4

『三つの死』

トルストイ/中村白葉 訳

まざまざと死を吟味する―――
さて生きる者はどこへ向かうのか?

肺を患う夫人はすっかり衰弱しきっていた。僅かな望みを抱いて転地療養を試みるが、旅の途中で付き人の鈍感さや夫の無神経さに苛立ちながら、やがて死へと赴いていく。死にゆく者と健康な者の心の隔たりを描き、自然の中に人間の生死を見つめる仮借なき生命のデッサン。


5

『砂男』

ホフマン/種村季弘 訳

夢想家ナターナエルを追いつめる
おぞましき砂男の影

優しい恋人のクララに、「砂男」の悪夢を伝えようと必死になる学生ナターナエル。恋人の恐怖を取り除こうと、クララは包み込むようにいたわるのだが・・・・・・。冒頭の三通の手紙はプロローグに過ぎない。その後に待ち受けている奇怪な出来事の連打は、ナターナエルを狂気の際へと追いこんでいく。


6

『シルヴィ』

ネルヴァル/入沢康夫 訳

過ぎ去った恋がからみあう―――
妄想的恋愛の驚くべき美しさと破綻

ヴァロワの村の輪踊りで少女に出会った瞬間、少年は戦慄する。幼い恋が生み出した幻影は幾度も記憶の淵から呼び出され、新たな恋が塗り重ねられていく。三人の女性を巡るエゴイスティックな恋愛、その喜びと喪失…。自然のすがすがしさと田舎の風俗、仄かなエロティシズムが交錯する恋愛小説。


7

『目に見えないコレクション』

ツヴァイク/辻瑆 訳

失われた数々の名画は
老人の記憶の中に輝き続けていた

老人の数百点に及ぶ貴重な版画コレクションは、戦後の窮乏生活をしのぐため、家人によりすっかり売り払われた。だが、いまや盲目となった老蒐集家はそれを知らず、古美術商の「私」を招き入れる。老人が白紙を前に絵の美しさを語りあげる場面は、細部にわたって記憶された生の輝きに溢れている。


8

『水晶』

シュティフター/手塚富雄 訳

信じあう兄妹の健気さ
雪山から生還する子どもたちの物語

クリスマスの前日、山間の小さな村からふたりの子どもが祖母をたずねて山越えをし、両親の待つ家へ帰ろうとしていたが・・・・・・。雪山に遭難した兄弟が生還するまでを描いた心洗われる名篇。村人たちの暮らしぶりや山の四季を諄々と描く前半は、後に続く物語に奥行きを与える美しい序奏となっている。


9

『一人舞台』

ストリンドベルヒ/森鷗外 訳

相手の女優は「ト書き」のみで登場 
一人語りの戯曲の魅力

登場人物はふたりの女性だが、話すのはひとりだけという戯曲。カフェで雑誌を読んでいる女優仲間に語りかける主人公は、恋も仕事も彼女と張り合い、今は勝者を気取っている。だが、話すうちに自分が深く彼女の影響を受けていることに気づく。一人語りの中にすべてを浮かびあがらせる話芸の魅力。


10

『鰐』

ドフトエフスキー/米川正夫 訳

鰐の腹の中でしゃべる男
貪欲な人間たちの、支離滅裂!

妻エレーナにねだられ鰐見物に訪れたイヴァンは、鰐に、がぶりと飲み込まれてしまう。悲惨な事件の未亡人になるはずのエレーナだったが、事態は思わぬ方向へ。鰐の腹の中から興奮してしゃべり続ける夫、人間より鰐を心配する見世物師・・・・・・。欲にまみれた人間たちが繰り広げる奇想天外な物語。


11

『王になろうとした男』

キプリング/金原瑞人・三辺律子 共訳

王になろうという発想!
どん底からの突破口を求めた男たち

灼熱の西風が吹きつける夏の夜、汽車で知り合った山師のような男が赤ひげの相棒を連れ「わたし」のもとを訪ねてきた。インドは狭すぎるからカフィリスタンという国の王になりに行くのだと言う荒唐無稽な話だった。だが数年後、ふたりが本当に「王」になりかけていたことを知らされる。

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12

『ジュリエット祖母さん』

ルゴーネス/牛島信明 訳

その夜、心は伝えあえるのか
ふたつの魂がたどった旅路の果て

人間嫌いのエミリオの唯一の楽しみは、二十も年の離れた伯母オリビアを訪ねチェスをすることだった。激しい愛を胸に抱きながら、自尊心の強いふたりは四十年もの間、淡々とした態度を崩さずつきあいつづける。老人となったふたりに、ある夜、心を伝えあうまたとない瞬間が訪れるが・・・・・・。


13

『純な心』

フロベール/太田浩一 訳

純な心がたどりついた
人生の悲しみ、その美しき最期

身寄りを失い家畜の世話をしていたフェリシテは寡婦のもとに雇われる。教育はないが働き者の彼女は、女主人とその子どもたちを慈しみ、ささやかな幸福を味わった。だが、やがて心を寄せた身近な人々は、ひとり、ふたりとこの世を去っていく・・・・・・。眼前の人への愛情に生きた女性の、人生の光。


14

『明日』

魯迅/竹内好 訳

悲しみよ、何も語るな
貧しくとも必死に生きる母の明日

後家の単四嫂子が夜更けまで糸車をまわす音が隣家に聞こえない日はなかった。だが今夜は音がしない。女は病に苦しむ我が子を助けようと呻吟しながら朝を待っていた。願をかけ、蓄財を投げ出し、医者のもとを訪れる単四嫂子。無知と貧困のなかで懸命に生きる母の姿が惻々と胸を打つ。


15

『バートルビー』

メルヴィル/杉浦銀策 訳

まったく手に負えない!
すべてを拒絶する謎の男の物語

ウォール街の小さな法律事務所にバートルビーという青年が筆耕として雇われた。黙々と書類を写す彼は有能だったが、それ以外は一切何もしようとしない。大目にみていた雇い主も青年の異様さに耐え難くなり、縁を切ろうと画策を始めるのだが・・・・・・。『白鯨』で知られるメルヴィルのもうひとつの傑作。


16

『秘密の共有者』

コンラッド/宇田川優子 訳

「分身」という奇妙な感覚にとらわれ
一瞬に運命を掛けた男の、危機一髪

殺人を犯したという海からの闖入者をかくまうことになった船長の「私」。なぜ危険を冒してまで男を守るのか。会ったばかりの男への奇妙な共感、孤独、任務への緊張。閉ざされた空間で異様な情熱に貫かれた「私」は、男を逃がすために大胆な賭けに出る・・・・・・。息詰まる心理劇は圧巻のラストへ。


17

『争いの果て』

モンゴメリ/村岡花子 訳

ずっと求めていた人生がある
懐かしい庭からはじまる愛の物語

二十年ぶりに里帰りをしたナンシーは、かつて喧嘩別れをした婚約者のピーターがまだ独りでいることを知る。従姉に復縁をそそのかされるが、再会したピーターは声もかけてこない。遠い昔のほろ苦い夢。だがある日、ナンシーのちょっとした悪戯からハプニングが。夢とユーモアに満ちた心温まる作品。


18

『死せる人々』

ジョイス/安藤一郎 訳

愛も、熱情も、生も、死も―――
いま、降りしきる雪がすべてを覆う

舞踏会に招かれたゲイブリェルの心は重く、外の雪ばかりが気になっていた。だが、人々が闇のなかに去り始めたとき、ある一瞬の光景が彼の生気を呼び覚ます。懐かしい思い出、妻の告白、降りやまぬ雪。彼はかつて味わったこともない時の深みに身をゆだねる。細密な描写が織りなす幽遠な心の世界。


19

『園遊会』

マンスフィールド/浅尾敦則 訳

喜びの日に舞い込んだ暗い報せ
万華鏡のような少女の心、人生の深い淵

園遊会の準備を母から任されたローラは喜びに踊り上がる。庭にテントを張る職人の仕草、花屋が届ける沢山のユリ、厨房のざわめき。何もかもがローラの心を浮き立たせた。だが、そこに暗い報せが飛び込んできて・・・・・・。めまぐるしく変化する少女の心が多忙な一日の終わりに辿りついた不思議な感慨。


20

『もっとほんとうのこと』

タゴール/内山眞理子 訳

心洗われる音楽のように
祖父から孫へ贈る、優しさと喜び

「おじいさまのは作り話ばかりだわ。なにか、ほんとうのお話っていうのを聞かせてよ」というクシュミに、「おまえは妖精の国からきた妖精だったけれど、この大地の重みに囚われてしまったんだ」とおじいさんは語り始める。晩年のタゴールが孫のために書いたという、清らかな優しさを放つ物語。


21

『片恋』

ツルゲーネフ/二葉亭四迷 訳

ツルゲーネフ×二葉亭四迷!
蕩けるような翻訳で読む、悲しい恋の物語

ライン川沿いの田舎町に逗留していた「私」は、異国の地で同じロシア人の兄妹に出会い意気投合する。穏やかで人好きのする兄と、不安定で子どものような妹。だが、兄から妹の悲しい生い立ちを聞き、「私」は激しく心を揺さぶられる。二葉亭四迷の自在な訳が濃厚な味わいを醸す悲恋の物語。


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