作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.98久留島武彦のこと
JPIC読みきかせサポーター講習会が大分市の県教育会館で開かれ、その基調講演の講師として出かけました。各地での講習会の受講者は主婦など一般の人というのに、会場に集まったのはほとんどが小・中学校の先生というのにはびっくりしたり、感激したりしました。貴重な夏休みにもかかわらず、三千円もの会費を払っての参加です。なんとかして子どもたちに本を読む楽しさをわからせ、豊かな感性を育てたい、どの先生の表情にもそんな思いがありありと読み取れました。
「読みきかせは技術の上手下手ではありません。読みきかせをする先生のハート、情熱こそが先決、子どもたちが待っているのは、ボランティアの人たちの読みきかせではなく、自分たちの大好きな先生の読みきかせなのです。自分が読んだ本のすばらしい感動をどうやって子どもたちに伝えてあげようか、その切ないまでの努力が子どもたちの心を強く動かすのです。」
そういったら、先生たちは深くうなずいてくれました。
そればかりか、ぼくの本もふくめて会場に並べられている児童書を一人で何冊も買う先生も少なくありませんでした。こんな先生たちがいる限り、子どもたちは決して読書ばなれをするはずがないと意を強くしました。と同時に大分が生んだ口演童話の大家・久留島武彦のことを思い出しました。明治七年に生まれ、最初は童話を書いていましたが、子どもたちに必要なのは「膝の前の友だち」であるといい、戦中・戦後も口演童話の行脚を続けた人でした。
戦時中たまたま奈良に疎開しておられたため、ぼくは何度も武彦の口演童話を聞くことができました。その話術のたくみさ、マイクがなくても何百人の子どもたちの心をたちまちお話の世界に引きこんでしまうのです。お話を読む楽しさだけでなく、改めて聞くよろこびも教えられました。さすがは大分の先生たち、久留島武彦の名前と仕事はちゃんと知っていました。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















