作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.91ある高校生の読書感想文

《今まで何気なく使っていた「障害者」という言葉、その本当の意味の残酷さを、この本は明瞭に僕に気づかせてくれた。それは少なからぬ衝撃となって僕を打った。著者の赤裸々で、凄惨で、苦渋に満ちた闘病記にも増して、心に伝わるメッセージだった。僕たちは「障害者」という時、その人が持っている身体的不全性を指している、と今まで思っていた。しかし、成田さんは違う視点を僕に教えてくれた。それは、障害者とは、その人が生きようとすることに、世の中から障害を与えられる人、という意味があるのだということをである。》

これは先日表彰式が行われた「毎日新聞バリアフリー感想文コンテスト」の高校の部で最優秀賞に選ばれた二年生の村瀬玄悟くんの〈「夢への前進」(成田真由美著・講談社)を読んで〉の書き出しの部分です。なかなかにしっかりした文章で、内容も若者らしい心情にあふれ、選者の一人であったぼくもまっ先に推せんしました。いまどきの高校生は、ろくすっぽ本も読まず、まともな文章も書けないといわれますが、こんなすてきな高校生のいることを知ってうれしくなりました。秀才タイプの高校生を想像していたら、いかにも素朴で、本は何度も立ち読みして読み終わったあと、次の日に買うといって笑わせてくれました。村瀬くんのような高校生がもっとふえてくれたら若者の本ばなれはなくなるかもしれません。

しかし、大方の感想文のつまらなさは、作者への見え見えのはげましや「私も作者のようにがんばりたいと思います」というたぐいの常識的な意見で、まるで心がこもっておらず、なぜ、本を読んだのか首をかしげたくなります。だからこそ《一流のすばらしい人間を外見しかみないで「障害者」にさせてしまった見識の狭さは、僕たちの社会が人間の何に意味を見出しているかをさらけ出しているようで、読んでいて全く恥ずかしかった。》という村瀬くんの思いに共感できるのです。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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