作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.154「おはなし隊」に菊池寛賞
キャラバンカーに児童書を積んで全国を巡回し、幼稚園、図書館、公民館などで子どもたちに読み聞かせや紙芝居を行っている講談社の「全国訪問おはなし隊」が、昨年度(第五十五回)の菊池寛賞を受賞しました。ちなみにこの賞は文化活動一般の分野において、その年度にもっとも創造的な業績をあげた人、あるいは団体に贈られる賞で、「おはなし隊」のほかに、阿川弘之、市川團十郎、桂三枝、小沢昭一ほかも受賞しました。
「おはなし隊」がスタートしたのは一九九九年七月で、京まで実に地球を十一周した距離になるといいます。訪問会場が九二〇〇ヶ所、読み聞かせのボランティア参加が六〇〇〇人以上とか。現在も進行中ですから訪問会場やボランティアの数は、さらに増え続けることになります。キャラバンカーに積み込まれる児童書は約五〇〇冊。絶版や品切れではない各社の本が平等に選ばれていて、一人でも多くの子どもが本と出会えることを目的としたボランティア活動です。授賞式は十二月に東京のホテルで行われ、ぼくも参加させてもらいました。各地からきた赤いユニフォーム姿の隊員さんたちの晴れやかな笑顔が印象的でした。
この地道な活動が認められたことは子どもの本にかかわる者の一人として、とてもうれしく思います。受賞をきっかけに世間の人たちも読み聞かせの大切さを考えてくれるからです。事実、「おはなし隊」のおかげで子どものための読み聞かせをする人がますます増え、その効果ははかり知れないものがあります。
読み聞かせは子どもの心を育て、人と人との絆を深くすることができます。人間ならではの豊かな想像力が持てます。恐ろしくも悲しい事件が続く今日、社会全体が読書の大切さを認識しなければなりません。ぼくの少年時代と比べての大きな違いは、私たちの生活から大人たちの語りが消えてしまったことです。その語りのためにも、読み聞かせをする大人自身が絵本や童話を好きになってください。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















