作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.153日能研文学ってなんだ?
新刊情報誌「こどもの本」の十二月号を眺めていたら、見慣れない文字が目にとびこんできました。文芸評論家、斎藤美奈子さんの書いたエッセイのタイトルが≪『日能研文学』は児童文学の未来を育むか≫となっていたからで、思わず「日能研文学ってなんだ?」と、つぶやいてしまいました。
大手学習塾の日能研が毎年出している「国語素材文に出題された作品・作者」という冊子に取りあげられている、中学入試によく出る作品のことで、≪この際まとめて『日能研文学』と呼んでみたい≫と、わかって納得しました。しかし、中学入試の常連の作品を、そのリストが日能研の冊子に出ているからといって「日能研文学」とは、いささか首をかしげたくなる呼び方です。
≪『日能研文学』のすべてが中学生の物語というわけではない。しかし、概していえるのは、偏差値高めの作品が多い、ということだろう≫とか、≪中学入試の担当者はじつに上手いところを拾ってくるものだなあ、とつくづく感心する≫とか、≪彼らは従来の『児童文学』の枠にもとらわれていない。あくまで内容本位で、『これは児童文学に認定してもよろしい』という作品を見つけ出す。その能力というか、嗅覚は、皮肉ではなく下手な文学関係者などが及ばないものだ≫などというのですから、あえて入試によく出るすぐれた作品として「日能研文学」と命名されたのでしょう。
ちなみに、二〇〇四年~二〇〇六年の三年間のベスト五位は、一位、重松清の『エイジ』、二位、森絵都の『リズム』、三位、養老孟司の『バカの壁』、四位、伊集院静の『機関車先生』、五位、あさのあつこの『バッテリー』と阿部夏丸の『泣けない魚たち』といいます。いずれも子どもたちに読んでほしい、すぐれた作品です。とはいえ、≪片方ではオカルト趣味のエンターテインメントがあり、もう片方には『良心的』で偏差値高めの『日能研文学』が控えている≫なんていわれると、そのリストに載らなければ、受験に関係のない偏差値の低い作品ということになるのでしょうか。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















