作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.150すばらしい子ども俳人

たった十七音で感動を凝縮できる俳句は、日本ならではのすばらしい短詩型文学です。いかに時代が変わろうと衰退することはありません。いまや大人ばかりでなく、子どもたちの間でも、俳句づくりが盛んです。

最近出版された夏井いつきさんの『100年俳句計画 ―五七五だからおもしろい!―』(そうえん社)を読むと、いささか類型的な大人たちの俳句に比べて、自由奔放な発想から生まれる子どもたちの俳句の方が、はるかに新鮮な気がします。ちなみにこの本は、毎年八月、松山で開かれる「俳句甲子園」の審査員であり、全国各地の小学校、中学校、高校で俳句の授業、「俳句ライブ」を行っている著者の、その時のエピソードや子どもたちの俳句を紹介したものです。

てつぼうの 上にすわった なつのそら(小二)

みなみかぜ はだしでのぼる すべりだい(小一)

夏の日の光景が子どものみずみずしい感性を通して、鮮やかにとらえられています。素朴でダイナミックな生命力にあふれた俳句です。

しかられて ゆらゆらにじむ ふじの花(小四)

先生か親に叱られたのでしょうか。涙で眺める藤の花が、悲しい心とともにゆらゆらとにじみます。もう泣くのはおよし、と、だきしめてあげたくなります。

きりぎりす 町で一人で 鳴く虫よ(小五)

ひとりぽっちのさみしさが、きりぎりすの鳴き声と重なり、心にひびきます。町という大きな空間にただよう一匹の虫。そのコントラストが見事で、子どもとは思えない表現力です。

鉄柵の ゴリラ微笑む 暑さかな 谷雄介

七夕や 君の心も 晴れですか 大西景子

いずれも高校生の俳句だけに、うまい。大人の俳人もたじたじでしょう。とりわけ、大西さんの俳句には泣かされます。やわらかな表現の中に切なくも熱い思いがあふれていて、胸を打たずにおきません。

それにしても、全国にはこんなにもたくさんのすぐれた子ども俳人がいるのかと思うとうれしくなります。夏井さんには、100年俳句計画のためにこれからも大いにがんばってほしいものです。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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