作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.148絵本に落とした涙
自分の書いた絵本が新聞や雑誌に紹介されたり、書評されたりするのは、だれだって悪い気はしません。売れ行きにかかわりなく、一人でも多くの子どもに読まれてほしいと願うからです。
しかし、考えてみれば、それを担当するのは大人であって、実際の読者である子どもの意見というわけではありません。もし、子どもの反応を知ろうとするなら、作者みずからが子どもたちに読み聞かせをするか、日ごろ読み聞かせをしているお母さんやボランティアの人たちに教えてもらうしかないのです。
先日、たまたま「子どもと読書」という雑誌を見ていたら、「絵本で知る子どもの成長」というタイトルで、ぼくの絵本『おじいちゃんのごくらくごくらく』(鈴木出版)についてのお母さんのエッセイが出ていました。
「そのページを読んでいたとき、絵本にボタボタ涙が落ちてきた。びっくりして子どもの顔をのぞきこむと涙でぐしゃぐしゃ。絵本を読んではじめての涙だった。我が家にも、おじいちゃんがいる。とてもやさしくて目に入れてもいたくないくらいに孫たちをかわいがってくれている。そんなおじいちゃんが大好きだから、あふれた涙。子どもの相手を思って泣く姿に、母としてもうれしく、心の成長を感じた。』
これは、そのエッセイの一節ですが、とてもうれしく読みました。たった一人でもいい、作者の思いをこんなにもしっかりと受けとめてくれる子どもがいることに強く勇気づけられました。どんな書評よりもありがたく。児童文学者である限り、子どもの心と向きあうよろこびや悲しみを書くべきであり、たとえ幼児であっても、人生のきびしさが理解できることを思い知らされました。
いま、全国で読み聞かせ運動が盛んです。できることなら読み聞かせ現場での子どもの生の声をもっと聞きたいものです。大人の癒しのための絵本もいいけれど、絵本の第一の読者は子どもです。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















