作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.147地域書店の奥さんに聞く

先日、京都へ講演に出かけた際、関西地区の書店経営者の奥さんたちの集まりに参加してほしいと頼まれました。講演前の一時間半ほどの話し合いでしたが、とても貴重な意見を伺うことができました。ほとんどが個人経営の方たちで、ご主人を支えてがんばってこられた、本の商売のベテランたちです。

「なによりも大切なのは子どもの本です。だから子どもに本を読んでもらうにはどうしたらいいか、読みきかせの会を開いたり、特別に子どもの本を展示したり、いろいろ工夫しています。でも、イベントに参加しても実際に本を買ってくれる人はわずか。いつかは本好きの子どもになってくれると信じています」
「小さな書店ですから、お客さんのほしい本が手元にないこともしばしば。なるべく早くといわれた時には、都会の大型書店まで買いに行くこともあります。もちろん、マージンなし。交通費は自分持ち、まるで商売にならなくても、地域のお客さんのニーズにこたえるのも町の本屋の役割です」
「私たちのような書店は商売だけを考えていたらやっていけません。オーバーに聞こえるかもしれませんが、地域の人たちの文化の小さな担い手だと自負しています」
「どこまでがんばれるか、正直いってしんどい。でも、地域のお客さんたちとの長いつきあいで今日までやってきたのですから」

いかに苦しくても地域の人たちとのかかわりの深い書店をなくしたくない、そんな決意がどの言葉にもこめられていて、頭のさがる思いがしました。

大型書店に押されて町の小さな書店がつぎつぎと消えていくというニュースをよく聞きます。しかし、それにもめげず奮闘している人たちがいることを忘れてほしくありません。長い間、子どもの本を売るために苦労してこられただけに、本当に大切にしたい本とはなにか、子どもの本の魅力とはなにかをとてもよく知っている奥さんたちでした。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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