作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.145ユニークな短歌の絵本
「めくってびっくり短歌絵本」(岩崎書店)という小学校高学年からのユニークな絵本が出ています。歌人の種村弘が有名無名を問わずに気に入った作品を選び、日常の短歌、恋の短歌、動物の短歌など、五冊にわけ(各冊とも十四首収録)、見開きの画面の右側に短歌をのせ、左側に簡単な解釈をつけたものです。
「観覧車 回れよ回れ 想い出は 君には一日(ひとひ) 我には一生(ひとよ)」「ふりむけば 鹿がぺろんと なめてゐた きみの鞄が きらきら光る」「ああ君が 遠いよ月夜 下敷きを 挟んだままの ノート硬くて」といった、新しい感覚の作品がたくさんあって、とても楽しく読めます。
子ども向きの短歌や俳句の本といえば、なんとなく国語学習の本というイメージが強くて、絵本にはなりにくいと考えがちです。確かに、どんなりっぱな絵がついていても、作品の意味がわからなくては効果がありません。そのかわり、意味が理解できれば幼児だって古典俳句を鑑賞することができます。
ぼくも今から四年前、幼児たちに有名な俳句を読ませてあげたいと考え、「はいくのえほん」(鈴木出版)をつくりました。松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶などの代表的な俳句を絵にしてもらい、そのまま読み聞かせる文章をつけました。
「これこれ すずめの こどもたち。みちの まんなかで あそんでいると あぶない、あぶない。はやく にげないと おうまさんに ふみつぶされてしまいますよ。ほら ほら、むこうから おうまさんが やってきました。 すずめの こ そこのけ そこのけ おうまが とおる 小林一茶」
といった調子です。おかげさまで、幼児たちによろこばれ、今も版を重ねています。おどろいたことに初めてこの本を出したとき、幼児たちが自分で俳句をつくり、出版社へ送ってきました。日本独特の文芸として長く親しまれている俳句ですから、幼児だって、その面白さがわかるのでしょう。
読み聞かせの絵本は、すべて「お話」がいいとは限りません。どんなジャンルの絵本だって工夫をすれば子どもの心をとらえることができます。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















