作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.140本当の絵本読者は子ども
心の安らぎを求めて子ども向きの絵本を読む中高年の人たちが増えていると聞きます。
そういえばこれまで絵本とは無縁であった著名な学者や評論家たちまでが、さかんに絵本の効用をのべるようになりました。すぐれた絵本は子どもたちばかりか大人までも感想させるのは当然で、最近出た大人のための絵本の味わい方ともいうべき『絵本屋の日曜日』(岩波書店)の中でも、著者の落合恵子氏は次のように書いています。《ささくれだったり目づまりを起こしている気分そのもの(個人的なそれはもとより、時代そのものの気分も含めて)に、一冊の絵本を通して小さな風穴をあけることができたら、と。》
しかし、絵本の書き手の一人として正直に考えてみると、大人の人にも読まれるのはうれしいけれど、本当に読んでほしいのは、やっぱり子どもたちです。あえていうなら、大人の心の癒しのために書いているのではなく、楽しいこともつらいことも含めて、どうやった子どもたちの豊かな感性を刺激してあげるか、そればかり思い続けているのです。 幼児向きの絵本にもかかわらず、大人の恋愛感情を象徴させたり、わざとらしいヒューマニズムをいいたてたりするものは、はっきりいって子ども向きの絵本としてふさわしくありません。どんなテーマであっても、子どもの心にふさわしい描き方が必要で、第一の読者は大人ではないことを意識すべきです。
もちろん絵本にもさまざまなものがあり、最近では大人向きのすぐれた絵本も少なくありません。だが、どんなにすぐれていても、高学年の子どもならともかく、幼年の子どもたちには理解不可能なものもあります。にもかかわらず、書店では大人向きも子ども向きも同じ絵本コーナーに置いてあることが多く、大人にとっても子どもにとっても、本選びに不便です。大人向きと子ども向きで、別コーナーをもうける配慮も必要でしょう。 いずれにしても、大人が自分で楽しむ前に、子どもたちに絵本のすばらしさをわからせてあげたいものです。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















