作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.136大人が読んでおきたい名作や民話

本ばかりでなくビデオやCDにもなって普及しているいわゆる名作童話や民話にもかかわらず、その内容をきちんと覚えていない大人が意外と多いことにおどろかされます。お母さんや保育士相手の講演の時にたずねてみると「シンデレラ」と「白雪姫」の話を混同していたり、中にはグリム童話がどこのお話か答えられない人がいて、がっかりすることがあります。

先日もたまたまテレビをつけたら、決して若くない女優さんがクイズ番組に出ていました。「ピノキオがうそをつくとのびるものはなに?」、「金太郎は大きくなってなにになったか?」「『かちかち山』でタヌキの相手になった動物は?」などと聞かれても即答できず、まぬけな答えを連発していて、その無知ぶりにびっくりしました。小さな子どもだって答えられるのにどうして、と思わずにはいられませんでした。

いま読み聞かせ運動が盛んです。子どもたちにお話のすばらしさをわからせてあげようとするなら、大人自身がしっかりとお話の内容を把握して、有名なお話ぐらいは本がなくても語り聞かせられるぐらいの能力を持つべきです。本などなかった昔の人たちは、一人で百も二百も昔話を覚えていて、いつ、どこでもいきいきと語ることができました。本の読み聞かせではあっても、その本質は昔の語り部と変わらないことを自覚しなければなりません。

名作と呼ばれる童話や昔から広く親しまれてきた民話は子どもと大人の共有できる世界であり、子どもと大人を結びつける会話にもなるのです。そんな話は知っているというあいまいな記憶に頼らず、もう一度しっかりと読みなおし、なぜ、どうして心をとらえるのかがわかる大人であってほしいと思います。その気になれば、世界の名作や民話を集めた文庫本もあります。子どもにすすめる前にまずは大人が読むことをおすすめします。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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