作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.131パパも絵本が好き
先日、『サンデー毎日』を読んでいたら〈『絵本を読む中年男』急増中〉の記事が目にとまりました。現在、女性ボランティアによる読みきかせ運動は盛んですが、そこに父親たちも参加を始め、絵本を買っていく男性が急増中というのです。「母親の場合、どうしても教育ツールとして絵本を選んでしまうが、父親の場合は、もっと判断基準が広がり、いろんな理由で絵本を選ぶことができる」のは当然としても、「絵本を読むことは子どものためだけでなく、自分の中にいる『子ども』の部分を呼び起こされる」との意見は共感する人も少なくないでしょう。ただし、この記事の取材先はほとんどが絵本専門店の店主や父親の読みきかせ運動の主催者などで、一般の父親たちがどう考えているかは明確でありません。
この前の日曜日に開かれた杉並区の公開講座「パパやグランパのための読みきかせボランティア養成講座」によばれたとき、参加者の少なさにびっくりしました。正直いって二十名たらずの人たちの前でお話しするなんて初めての経験で、圧倒的に人数の多いママたちの会に比べて、まだまだ絵本に対する父親の関心が乏しいのを実感しました。子どものために読みきかせをしたいと考える人は多くても、みずから絵本の魅力を自覚する意見はほとんどきかれませんでした。
それはともかく父親や中年の男性に絵本が読まれるのはいいことで、たとえ子ども向きの内容であっても大人の鑑賞にも耐え得る絵本が求められることになります。 絵本は読みきかせをするための単なるテキストではなく、生きるよろこびやかなしみを、子どもも大人も共有できる唯一の本としてとらえなおす視点も大切です。 宮沢賢治や新美南吉の童話ばかりでなく、近代のすぐれた童話や短編小説なども絵本になれば、更に大人の読者を増やすことができるかもしれません。事実、そういう絵本もわずかながら見かけるようになりましたが。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















