作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.129なぜ、動物を擬人化した絵本が多い

幼児向きの絵本といえばどうして動物を主人公にしたものが多いのでしょうか。新しく出版された絵本を見ても、たいていは、くま、きつね、うさぎ、ぶた、ねこ、いぬなどのお話で、人間そのもののお話として書かれたものは圧倒的に少ない。月刊の保育絵本の中にはどれもこれも動物のお話で人間を主人公にしたお話がでてこないなんてこともあります。

昔話のように人間よりも動物を擬人化したお話の方が幼児に親しみやすく、幼年童話はいつだって動物が主役です。なにをどう描こうと幼児たちの心をとらえる絵本であることが先決で、動物を主役にした傑作絵本も少なくありません。しかし、幼児向き絵本だからといってなんでも動物のお話にしてしまうのは考えものです。動物をデフォルメした絵が楽しいだけで、まるでリアリティーのない絵本ではどうにもなりません。なぜわざわざ動物のお話にするのかよく考えてから書いてほしいものです。

去年の課題図書になった絵本の『しゅくだい』(岩崎書店)。この絵本は第三三回JOMO童話賞に入選した人の作品(一年生の男の子が先生からお家の人にだっこしてもらうという宿題を出されるユーモアにあふれた童話)を原案とことわって(正しくは原作というべきでしょう)プロの絵本作家がもぐらを主人公にした動物のお話に書き改めたものです。独特の個性を持つ可憐な絵はともかく、原作の方が現実の子どものお話としてはるかに面白く、まるで自分のことのように子どもたちをわくわくさせてくれます。選者の一人として正直にいわせてもらうなら原作のまま絵本にしてあげてほしかったと思います。

それにしても生きている子どもの日常世界の泣き笑いをいきいきと描く絵本がもっと書かれるべきです。いかに幼児とて、なんでも動物が人間の代役では臨場感を持てず、いかに想像力が大切といっても人間とはなにかの意味を忘れがちになっています。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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