作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.125国際アンデルセン賞の候補作

児童文学に於ける世界的な賞として国際アンデルセン賞というのがあります。一九五六年、ストックホルムで開かれた国際児童図書評議大会で第一回の授賞式が行なわれ、『ムギと王さま』(邦訳/岩波書店/一九五九年)で知られるエリナー・ファージョンが受賞しました。以後、二年ごとに選考会があって、リンドグレーン、ケストナー、ヤンソン、ロダーリなど、すでに二十五人の作家たちが受賞しています。一九六六年から作家賞のほかに画家賞もつくられ、センダック、ウンゲラーなど、二十名の受賞者がいます。

ちなみに日本人の受賞者は作家賞では一九九四年のまど・みちお、画家賞では一九八〇年の赤羽末吉、一九八四年の安野光雅のあわせて三人です。

一昨年、たまたま国際アンデルセン賞のための作家賞部門の国内選考委員を依頼され、四人の選考委員によって佐藤さとる氏を推せんすることになりました。その折、前回国内選考で選ばれた作家はどなたかとおうかがいしたら、石井桃子だというのです。正直いって、びっくりのあまり、しばらく声がでませんでした。一九六二年から受賞対象は作品でなく、作家の全業績に変わったとはいえ、現代の日本児童文学を代表する作家としてはあまりにも古すぎやしないかと思いました。作家、評論家、翻訳者、編集者、読書運動の実践者として日本の戦後児童文学界に大きな役割を果たしたことは、だれもが認めるところで、明治四〇年の生まれですから、文字通りの長老です。だからといって『ノンちゃん雲に乗る』(光文社/一九四九年)といった、今日読めばマイホームパパの典型みたいな家族物語を代表作とする作家を日本の代表とするのはいかにも時代遅れといわざるを得ません。そもそもいまから五十七年も前の作品をどうやって評価できるでしょう。なぜ選ばれたのか、いまなお疑問が残ります。なんてことを考えていたら二〇〇五年度の選考委員も依頼されました。どんな作家を選ぶべきか頭の痛いところです。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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