作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.124「ごくせん」みたいな小説があったら

「ごくせん」(極道先生)というテレビドラマがあります。視聴率が高いと評判なので、どんなドラマかと何度か見てみました。マンガが原作の学園もので、か弱く美しい若い女性高校教師が自分の担任するワルの集まりである男子生徒のためにからだを張って人間らしく生きることの大切さを教えるお話です。

といって、こんな教師が現実にいるはずもなく、もちろん架空のドラマであることはいうまでもありません。一度キレたらヤクザまがいのタンカを切り、屈強な悪者たちをあっというまに投げとばしてしまいます。というのも極道の四代目で、超人的な腕っぷしの持ち主であるからです。日頃はひたすら自分をかくしていますが、教え子がひどい目にあわされた時はどんな強い相手でも敢然と挑戦していきます。それがなんともカッコよく、見ていてスカッとした気分になります。

正直いって、とんでもない不良生徒が母校の教師になったとか、ヤクザの女であった人が弁護士になったとかいう美談としてもてはやされるノンフィクションよりはるかに面白い。どんな美談も自分で自慢するようでは、迫力に欠けます。それに比べて「ごくせん」はたとえ荒唐無稽のドラマであっても今日の学校のあり方や不満のはけ口のない不良生徒たちの気持ちがよく理解できます。彼等の気持ちを痛いほどわかってくれる熱血先生だからこそ、そのオーソドックスなお説教にもつい耳を傾けたくなるのです。生徒のことなんかどうでもいいからとにかく卒業するまでの三ヶ月間、大きな問題を起こしてほしくないという設定は教師側の本質を見事についていると思います。

というわけで、児童文学の世界にもこんな学園小説があったら、きっと面白く読めるのではと考えてしまいました。仲間由紀恵の演じる「ごくせん」は勉強以上に(なにを教えている先生だっけ)、子どもたちが大好きになれるスーパーウーマンなのですから。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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