作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.121ボランティアの読み聞かせ

ボランティアで子どもたちに絵本の読み聞かせをしたいというお母さんたちが増えています。
しかし、そういうお母さんたちの中で自分で絵本を選び、それを買って読んであげる人は意外と少ないように思います。次々と新しい絵本が出るのに、人気のある絵本を図書館で借りてきたり、かつて自分が読んだことのある古い絵本を家から持ち出してきたり、読み聞かせることだけが目的で、なぜ読み聞かせをするのか自覚を持たないお母さんもいます。古くてもよい絵本はたくさんあるけれどいつもおなじみの絵本ばかりでは聞いている方だってあきてしまいます。

今度はどんな絵本かなと期待する子どもだってたくさんいるのです。その気になればいくらでも自分で絵本を選ぶことができます。あえていうなら自分が読んですばらしいと思えばそれを子どもたちにも伝えるべく、読み聞かせにも当然熱がこもるはずです。
自分がこれぞと思う絵本を自分で買って読むぐらいの気持ちを持ちたいものです。

数は少ないけれど、読み聞かせを自分のパフォーマンスのつもりで楽しむ人もいます。

すっかり声優気取りで、聞き手の子どもたちの気持ちなどそっちのけ。
こういうお母さんには読み聞かせなどしてほしくありません。読み聞かせの究極の目的は子どもたちがいつか自分で読むように仕向けてあげることで、読み手の趣味のためでないことをはっきり自覚すべきです。

更につけ加えるなら、絵本の読み聞かせは子どもをよろこばせるだけの遊びではありません。興味をひくための仕かけ絵本や見て楽しむいわゆる参加型絵本は必要ですが、見て聞いて心に残るものこそ大切で、それをきちんと子どもに、伝達してあげるのが本当の読み聞かせといえます。相手の迷惑も考えずに園や学校にまで押しかけて行って読み聞かせをしたがるのはボランティアではなく趣味の押しつけになり、ボランティアをしているのは聞き手の子どもということになってしまいます。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

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