作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.120「ハリポタ」ばかりがファンタジーではない
超ベストセラー作品として人気をほこっていた「ハリポタ」シリーズも最近作の第五巻『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(静山社刊・上下二巻)が大量に売れ残っているそうです。いかに人気があるからといって上下巻あわせて四二〇〇円、しかも分売不可というのですから子どもたちにはおいそれと買えそうにもありません。
発売日を決め、全国の書店でいっせいに売り出したところで、柳の下に何匹もどじょうはいなかったようです。とはいっても版権をにぎっていて、自分で訳して、自分の出版社で本にするのですから強気になるのは当然でしょう。とはいえ最初は評判につられて「ハリポタ」を買い求めた大人たちもだんだんはなれていくようで、いつまでも呪文や魔法の出来事に夢中ではいられないからです。筋立ての面白さはともかく、同工異曲のドラマもすっかり薄味になってしまいました。それでも映画の場合は手をかえ、品をかえて観客を楽しませようと努力していますが(第三作『ハリーポッターとアズカバンの囚人たち』)文章ではいまひとつ、イメージがわきにくく、人の魂を吸い取るディメンターや半鳥半馬のヒッポグリフにしても映画のほうがまだしもわかりやすい。
比較するものはよくないかもしれませんが、同じく映画にもなった本格的ファンタジーである『指輪物語』のほうがはるかに読みがいがあり、大人にも考えさせられる哲学があります。ハリー・ポッターたちもどんどん成長していくので、魔法とのかかわりにも違和感があり、また子どもの楽しめるファンタジーとは異質なものになっていくような気がしてなりません。第五巻でいよいよ真実がときあかされるそうですが、果たして・・・。
ファンタジーブームに火をつけた功績は否定できませんが、いつまでも「ハリポタ」と持ちあげてばかりはいられないように思います。
外国の作品や日本の作品にも、子どもたちに読ませたいファンタジーはまだまだたくさんあります。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















