作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.118子どもにも読ませたい『グッドラック』
大人のためのビジネス寓話として爆発的な売れゆきを示している『グッドラック』ですが、すぐれた人生の書として子どもたちにもぜひ読ませたい一冊です。
逆境に耐え、必死の努力で事業に成功した老人が、恵まれた境遇にありながら不運な人生を送ってきた幼なじみの老人に、祖父から聞かされた「魅惑の森」という物語を語りながら「幸運は自らの手で作り出す」ことをしみじみと読者に問いかけてくれます。
手にした者に幸運をもたらす魔法のクローバーを探しに出かけた二人の騎士。一人は森の住人たちにそれが生えている場所をたずねまわるのに対して、一人は下ごしらえをして自ら育て、その結果、見事に魔法のクローバーを手にすることができます。
いかにも寓話らしいシンプルなストーリーですが、その描き方は実にドラマチックでスリリングなファンタジーとして読者をひきつけずにはおきません。
作者はマーケティング戦略の専門家コンビだそうですが、どうしてどうして童話の書き手としても一級の腕前です。ノーム、湖の女王、魔女などの妖怪や妖精たちの描き方もたくみで、リアリティを感じさせる伝説にも仕上げています。
しかも、たった七日間の限られた時間でのクローバー探しが読み手の期待感と不安感をぐいぐいと盛りあげていきます。自分の自慢話ではなく、幼な友だちのジムの心を思いやるマックスのやさしさがいわゆるお説教訓ではない感動的な友情物語として読むことができます。
寓話といえば『イソップ物語』しか知らない子どもたちに人生は決してつらいことばかりではなく、その気になってがんばれば輝かしい未来のくることを心底納得できる物語として手渡してあげたいものです。まさに親子で読める生き方を考える本といえます。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















