作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.114教科書に載せられた文学作品
各社の平成十七年度版の小学校国語の教科書が出来あがりました。少しでも多くの学校で採択されるようにと、来年に向けて激しい販売合戦が行われます。掲載継続の作品もあれば、新しく掲載される作品もあります。しかし、自分の作品が教科書に取りあげられたからといって、よろこんでばかりはいられません。
正直にいうなら、すぐれた作品は教科書で学ぶより一人で読む方がはるかに楽しいかもしれません。教科書はいうまでもなく勉強するための本であり、読書のための本ではないからです。まずは音読から始まって、漢字やことばの勉強、更には読解や話しあいなど、さまざまな学習が行われ、一人で作品をじっくり味わうどころか、もう読むのがいやになったところで、ようやくその作品から解放されることになります。
もちろん、教師の能力によって教科書から文学の魅力を知ることもできるわけですが、たいていは退屈な作品になってしまうのです。
更に不思議なのは、幼児向きに書かれた絵本のお話が、教科書では二、三年生、時には四年生の教科書に載ったりすることです。かつてお母さんや園の先生に読んでもらって面白かったお話を、今度は教材として学習しなくてはなりません。というのも、文学作品は「出会わせる時期」と「学習する時期」の二つがあって、これまでは二つの時期を重ねるようにしていたので学習のパターン化ができてしまった。だから二つの時期を別々にした方がいいとする教師たちの議論が盛んになったからです。
「学習する時期」にふさわしい作品かどうかはともかく、「(作品と)出会わせる時期」まで制限したくありません。内容が理解できるなら、いつ、どんな作品と出会ってもよいのです。しかし、幼児期に出会った作品を三、四年生になってくどくどと説明されたのでは、読書の楽しさは半減してしまいます。
教科書で勉強しないからこそ、心に残る作品があることも忘れてほしくありません。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















