作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.112宝物の作品はいっぱいある
毎月おびただしいほどに出版される本も書店の棚へ並ぶのはわずか。ましてや児童書コーナーがますますせばめられていく今日、店頭に並ぶ創作児童文学は数えるほどしかありません。ファンタジーの本が好評といっても「ハリー・ポッター」のシリーズの影響で少し読まれている程度で(それも翻訳物ばかり)ブームというには抵抗があります。
創作物は売れないのも確かですが、正直いって近頃は心に残る作品が乏しいと思います。書評をしたり、文学賞の候補作を選ぶため、リストを頼りに手元にない本を取り寄せて読んでみるのですが、まあまあの作品は数冊で、あとの大部分は店頭で拾い読みできたら買わなくてすむものばかり。名前のよく知られている作家でもかつての作品と同工異曲で、新鮮味がないのです。
それならむりに書きおろしをしてもらわなくても、かつてのすぐれた作品を復刊した方がいいのではと思いたくなります。実際、復刻版を出している出版社もあり、送られてきた作品を改めて読み返してみると、決して悪くはないのです。すぐれた作品は時代を越えても古くならないことがよくわかります。
去年出た「読書の時間に読む本」が好評だというので今年も小学一年生から中学三年生までの「読書の時間に読む本」をまとめました。各学年とも収めてあるのはすべて短い作品ばかりですが、古典や戦前、或いは戦後まもなくのものでもその魅力は少しも失われていません。有名な作品はともかく、あまり知られていない、でも、ぼくの心にいつまでも残っている作品はすばらしく、今の子どもたちにだってきっと面白く読んでくれると確信しています。少しぐらいむつかしい内容であってもじっくり読めば短編ならではの味わいがあるはずです。
宝物は捨ててはならない、つまらん今日の作品よりはるかに力がある、そう思えばまだまだ読んでほしい作品はいっぱいあります。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















