作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.109そっくりにつくられた本
どの出版社も売れない本より売れる本を出したいと、しのぎを削っています。ヒットした本があると、それと似た企画の本が次々と出るのは当然です。しかし、だからといって内容はともかく、装丁から構成、文字や絵までそっくりの本を見ると、なんだか、ニセモノの本のような気がして、買う気がしなくなります。ましてやその本が自分の書いた本のイミテーションであった時は腹が立つよりその本の作者と出版社が気の毒になります。「そこまでまねをしなくちゃやっていけないのか」と。
おかげさまで、ぼくの書いた『幼児のためのよみきかせおはなし集』(ポプラ社刊)も7冊になり、一冊目は二〇〇三年十一月で28刷りになっています。ありがたいことです。ところが、七冊目が出る前、たまたま近くの書店に行っておどろきました。もう出たのかと、手にとってみたら、著者も出版社も別の本でした。しかし、目次の下に丸いカットを入れるところから、お話の最後にワクで囲んで解説を入れるところまで、なにからなにまで見事にそっくりにつくられています。本の大きさも同じで、中味はもちろん幼児たちに読みきかせるための名作童話や昔話です。内容や解説について文句をいうつもりはありません。だれがまとめて、どこから出版しようと自由であるべきです。
でも、本づくりまでそっくりにするのは情けないと思います。ある会で、その本の著者に会ったので、「本を出すのはいいけれど、人の本をまねたつくり方は感心しない」と、いったら、「はずかしい」といいました。
似た企画の本を出すときは、他社の本をまねるのではなく、自社の本としてほこれる本を出したいものです。どっちの本がすぐれているか、読者が見ればよくわかります。更にいうならまねをする本よりまねをされる本のほうがずっとすばらしい。柳の下にどじょうは二匹いない時代です。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















