作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.108『4 TEEN』を読む

今回の直木賞に決まった石田衣良の『4TEEN』を読みました。児童文学として書かれた作品ではないけれど、東京の下町、月島を舞台に、十四歳の少年四人組を主人公にした青春小説として、同世代を描く児童文学よりもはるかに面白く、見事な成長小説になっていました。全部で八編の短編を集めたオムニバス形式の小説集ですが、どれほど時代や環境が変わろうと、友だちを信じて生きることのすばらしさが、どの物語からもいきいきと伝わってきて、受賞の記者会見で作者がのべた「もっと子どもたちの生きる力を信じてあげよう」という言葉にウソのないことがわかりました。早老症という病気で入院している仲間の誕生日プレゼントとして金を出しあい、女の子を送り込む「びっくりプレゼント」、拒食症で家に閉じこもっている女の子に「私を変えてくれ」といわれ、セックスまでしてあげる「月の草」、不倫サイトで知り合った人妻のために、なぐられながら暴力亭主をいさめる「十四歳の情事」、がんセンターの病室から逃げ出した瀕死の老人といっしょに花火を見てあげる「大華火の夜に」、よっぱらいの父を外へ置きざりにして死なせてしまった仲間をかばう「空色の自転車」など、全部の作品に共通するのは、人間ならだれしも持つべきはずのやさしさであり、思いやりであることに気づかされました。それを確かめあうように少しずつ大人になっていく少年たちの姿を私たちの身近な現実を通して描くところにだれもが共感できる青春ドラマとしての味わいがあります。作者は「十五歳への旅」の中で「ぼく」にいわせています。《今から何年かして、自分がだめになりそうになったら、今日のことを思い出すようにしよう。あのときすごくいいやつらが四人いた。自分だって人生の最高のときには、あのメンバーにはいれるくらい絶好調だったって。》青春小説とはなにか、すぐれた成長小説とはなにか、その本質を改めて教えてくれます。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

ページトップに戻る